グワイニャオン『ないでこ』

若手演出家コンクール2006・グワイニャオン『ないでこ』
2007.2.28・3.3
下北沢「劇」小劇場
作・演出:西村太佑
出演:池上リョヲマ/尾形雅宏/片山史雄/可児奈穂子/小岩井美緒/酒巻静/すわいつ郎/高橋稔/田中めぐみ/水野裕子/渡辺利江子
http://www.guwalinyaon.com/index1.html
http://www.k2.dion.ne.jp/~jda/wakate_top.html

コンクール2日目。昨日観てきました。
アフタートークで審査員がちょっと言ってたことなんですが、このコンクール、若手「演出家」コンクールなのね。つまりここで評価すべきは「演出」なんであって、たとえばストーリーがいまいちだったとしてもそれは脚本が、つまり「作家」が悪いんであって「演出家」の仕事とはまた別。いかに純粋に「演出家」の仕事を評価するか、そのあたりが難しい点、という話。たしかにそうだと思うので、「演出家」コンクールだというなら、同じ脚本を渡し、それぞれがそれぞれのやり方でキャストを集め舞台にしてみろ、という方がコンクールとしては筋が通ってるというか公平というか。脚本家と演出家がイコールの場合、その仕事を「脚本家の仕事」「演出家の仕事」と分けるのは不合理。だとしたらこのコンクールの「演出家」っていうククリはなんか漠然、というかぼんやり曖昧としていて、何に軸を置いて評価されるのかがちょっと気になる。5日の公開審査会で審査員の意見がいろいろ聞けるだろうから、そのへんもちょっと楽しみにしよう。
以下、簡単に感想など。









  • 私にとっては残念な公演に。正直なところを申し上げて、いいと思える要素がひとっつもない、退屈な芝居でした。これは私の好みの芝居と違う、というレベルの話ではなく、あまりにもいろんなことが雑すぎる印象。
  • まずセリフが聞きとりづらかった。役者が噛んだりトチったり、っていうのならわかるけど(とはいえびっくりするぐらい噛み率トチリ率が高かったんだけど。申し訳ないけど稽古不足なのかと思ってしまったくらい)、セリフが聞こえづらいっていうのはほんとに根本的な問題で、セリフを追うのに余計に集中力を割かなくちゃいけない感じになってしまったのがけっこうなストレス。原因は役者の発声もあるし、BGMが多い・大きい上にセリフにかかるように流れるのでかき消されがちになってしまったっていうのもある。特に始まりの方では主人公の女の子がフルフェイスのヘルメットを被っており、声が篭って余計に聞こえづらくてイラっとなった。
  • セリフもそうなんだけど、巧いと思える役者が1人もいなかったな… いい役者を集められるかどうか、どうやって演技をつけていくのか、その辺は完全に演出家の腕の見せ所になると思うんですけど…
  • 唯一、「この人面白いな」と思った役者が演出家の西村氏であった。むう。
  • フスマ大の板を役者達が動かしてそれぞれのシーンを作っていく、という演出。家になったり電車になったり車になったり。仕込みとバラしの時間が限られてる中での効率と効果を考えたいいアイディアだと思うし面白くもあったんだけど、全体的にバタバタしてしまう上に、板と板の隙間からそれを支えている役者がちょろちょろ見えちゃって(「見せる」という効果もあったんだけど「隠れてるんだけど見えちゃった」というのもあった)興ざめしちゃったり、という点で私はあんまり好きな手法じゃありませんでした。
  • 半端な殺陣は場転のダンスより苦手です。
  • 物語が盛り上がりに欠ける。町中(世界中?)の人々がゾンビになってしまった中で、生き残った主人公がゾンビとなった父と暮らす物語なんだけど、父娘の愛情物語にしては内容的に薄いし生き残りをかけたサバイバルものでもなく、ホラーというには怖くもなく緊迫感もない。コメディと言えるほど笑える要素もない。
  • 自衛隊員の登場がエピソードとしてあまりに中途半端。「ゾンビとなり人を喰いたくなかったら、ゾンビに噛まれる前にこれで自分の頭をブチ抜け」といって主人公に銃を渡した自衛隊員が、自分がゾンビに噛まれたときに潔く自分の頭を銃で吹き飛ばす。そこまではいいんだけど(「噛まれる前に自殺しなきゃ意味なくない?」という程度の些細な整合性のなさには目をつぶる。)、主人公がラスト近く、大量のゾンビに襲われるシーンでこのエピソードがぜんぜん絡まないのな。「じゃああの自衛隊員たちはいったい何だったんだ?」というわけで浮いて見えました。
  • 独白がとても多いのですが正直力のない役者に独白やらせるとダレます。
  • 私が座っていたのは最前列の下手側だったんだけど、重要なシーンに役者や装置が被って見えづらい、というのが二回ほどあった。これはどうなんですかね… 立ち位置の把握ができてないってことになるのかしら。今まで数多く芝居観てますが、重要なシーンが役者や装置によって見えない、なんてこと初めてでした。
  • 唯一、「黒子のジョニー」の登場は秀逸だった。存在だけで面白かったし。このジョニーを主役に据えた芝居の構想があるんだとか。いい芝居になるといい。
  • というわけでほんとに申し訳ないけど褒められる点がほとんど見出せないまま。ちらちらと時計を気にしながら、「まだ終わらないのかな」と考えながら観てしまった1時間。