花の生涯

映画はこれを観てきたんだった。→『花の生涯―梅蘭芳
「『さらば、わが愛 覇王別姫』を超えた!」的なアオリ文句が躍ってる時点でかなり二番煎じ感を感じてしまって、そのうえ『覇王別姫』は私にとってとてつもなく大切な作品なもので、この『花の生涯』は「ちょっとやそっとじゃ感動したりなんかしないんだから!」というカタクナな気持ちもなくもなく、まあそんな感じでわりとナナメな気持ちで、でも自分がナナメな気持ちになってることは充分自覚した上で先行上映してる新宿ピカデリーへ。オリジナルブックマークのオマケなんかいらないから1800円で観せてくれよ…(特別興業のためチケット一律2000円)
んで、感想ですが。










うー…ん…どうなんだろう。つまらなかったと断じるほどには面白くないわけじゃなかったんだけど、全体的に退屈な映画、という印象。二時間半ないくらいの、この手の映画にしてはそんなに長くない作品だったんだけど、途中で長いなーと感じて飽きてしまった。
さすがチェン・カイコーだけあって映像は綺麗だしカメラワークも凝ってるし、ストーリーも面白いっちゃ面白いんだけど、「軸」になる部分がなくてつるつると流されるように話が進んでいってしまって、心にひっかかるところがない。梅蘭芳の人生において一番重きを置かれる部分が何だったのかが明確に伝わってこない。孤独な人であると言いながらもさほど孤独感を醸し出しているわけでもなく、妻と愛人を交えた三角関係もさっくり終わっちゃうし、日本軍とのアレコレもいちエピソードの域を出ない。あえて言うなら義兄との関係が「軸」になってる部分だったのかも知れないけど、それもなんか食い足りない感。天下の名優の一生物のわりに舞台シーンも少ないし(思い出せる範囲では、レオン・ライが演じた舞台シーンて2回しかなかった。素で唄うシーンはあったけどそれも1回きり)、『覇王別姫』における文革シーンみたいに激しく盛り上がるクライマックスもなく…かといって淡々とした静かな作品なのかといったらそういうわけでもない。つまりすべてが中途半端。
あんまり過去作品と比較するような形で感想を述べるのは正しい見方じゃない気もするんだけど、でも「『さらば、わが愛 覇王別姫』を超えた!」なんてのは覇王別姫と比較されることを前提としたアオリだと解釈してまあ比べちゃうんだけど、やっぱレオン・ライレスリー・チャンじゃ文字通り役者が違う、ってことなんだろう、なあ。舞台と現実が混濁して現実世界でも「女」であった程蝶衣と、現実世界ではあくまでも一人の「男」であった梅蘭芳とじゃキャラクターがまるで違うということを前提に置いても、レスリーが程蝶衣というキャラクターに寄り添ったほどにはレオン・ライ梅蘭芳というキャラクターに寄り添えなかったということが言えると思う。レオン・ライが私にとって昔からいまいち苦手な俳優で正直あんまり興味が持てないということをさっぴいても、レオン・ライにこの役はハードル高かったんじゃないかなーという感想。チェン・カイコーレオン・ライも、梅蘭芳という実在した人物に対して遠慮があって、思い切って「料理」できなかったのかも知れない。
…って、いろいろ生意気な感想述べましたけど、青年期を演じたユイ・シャオチュンは綺麗で良かったし、それなりに見所もあった映画だったと思います。よ。