劇団東京おいっす!『時効を待ちながら』

劇団東京おいっす!『時効を待ちながら』
2009年5月26日(火)〜6月2日(火)
下北沢「劇」小劇場
脚本:松永光浩
演出:佐藤森永
出演:奥原邦彦/伊東敦志/須藤淳一/小林大介/浅見奈生子/吉岡のえ/ロン佐藤 村上航(猫のホテル)/松坂龍人(Stage Station)/中谷真由美/工藤牧(黒テント
http://tokyo-oissu.com/fight_new.html

30日と楽日に観に行く予定が、予想外に(失礼)面白くて急遽チケット取って今日も観に行っちゃった。2日までやってるから気になった方は観に行くと良いと思う。










話も面白かったんだけど、それ以上によく構成された芝居だなーって感心してしまった。男性専用サウナに集まった15年前の殺人事件の犯人と被害者の父親と刑事、それに常連客や従業員が加わって、15年前の事件の真相究明と同時にその場で起きるてんやわんやを描いたシチュエーションコメディ。勘違いに勘違いを重ねて思わぬ方向に話が転がっていくというのはシチュエーションコメディの基本だからそういう点で目新しさのある芝居じゃなかったんだけど、ドタバタしすぎない匙加減やサスペンスとしてのじりじりとした緊張感のバランスが良くて、登場人物たちのキャラクターも多彩だし飽きることなく最後まで。俳優たちの安定感のある演技もあって、ストレスなく楽しめた。
結局、15年前にそもそも殺人事件など起きていなかった、というのが真相なんだけど、最後、15年間求め続けた真相のあっけなさに、憎むべき犯人も失いやり場のない怒りと15年間の苦しみに耐える父親の姿が痛々しくて、コメディと銘打ち確かにコメディでもあったんだけど、それ以上の人間ドラマが描かれていてそういう点でもよく出来たいい作品だなーと思った。人間ドラマといえば、多くの人物が登場するんだけど、そのそれぞれがきちんとキャラが立ってるし自分の役割を持っていて意識的無意識的に事件に関わっていく、ていうのも良かったなあ。伏線がきれいに活きていくあたりとかもうまいと思ったし。ニュースが遅れたんじゃなくて時計が進んでたんだね!(二度目を見て気付いた地味な伏線)
今回この芝居を観に行ったのは猫ホテの村上さんが客演してたからなんだけど、コメディなのに一切笑いに絡まない、すっげーヤな男の役。猫ホテやさわやかじゃなかなか見られないであろうマッドな犯罪者、っていう役どころを見事に演じていて、この人こういう役もできるんだなーとますます惚れた。自分が殺した子ども(結果的に殺人はしてなかったんだけど)の父親に執拗に子どものことを世間話らしく訊いたり、時効目前に交換殺人の相手の男を強請ったりとまー悪役。好物すぎる…! ていうかふつうに村上さんがかっこいいと思ったよ… そんな性格破綻な男を演じていながらも、カーテンコールでは乱闘シーンで足が舞台から客席にまで飛び出してしまったことでお客さんを気遣ってくれる村上さん。相変わらず紳士。
舞台がサウナなもんで男優全員腰にタオルのみの半裸で1時間40分、ていう状態の芝居なので、風邪など引かずにみなさんがんばってください、とエールを送りたいっす。なんか今週に限って気温も低いしねえ…