三匹の犬『現実はきびしく私たちは若いけれど要求は唐突で思い切るという手もあるかもしれない』

三匹の犬『現実はきびしく私たちは若いけれど要求は唐突で思い切るという手もあるかもしれない』
2010.3.25(木)〜29日(月)
pit北/区域
作・演出:鈴江俊郎
出演:金子岳憲(ハイバイ)/光瀬指絵(ニッポンの河川)

急遽チケットを取り、3/27のソワレへ。pit北/区域て初めて行ったけど、なんか地下の核シェルターみたいなアングラな雰囲気満載の劇場で、北区にこんなとこが…てちょっと不思議な気分になった。
見ごたえたっぷりの1時間20分! いや素晴らしかった。
同棲している男の元から去ろうとしている女と、それを引き止めたい男。男は平和主義を訴える左翼活動家。女の荷物を載せた引越し屋のトラックが出てしまう1時間後までに彼は彼女を「オルグ」できるのか? というのが物語の大筋で、中盤のほとんどは男が女に世界平和と自分の政治活動の意義を説くシーン。その世界平和という気高い理想が女の「他に女がいるんだ」というヒトコトで一気に地上レベルに引き下げられる瞬間が妙に爽快でゲラゲラ笑ってしまった。現実に見切りをつけて次なる現実へ目を向けようとする女と、いつまでも理想にしがみついてそこから離れる勇気を持てない男、というテーマに目新しさはないものの、だからこそそのあたりが意外な変化球で攻めてこられるとすごい説得力のある物語を生み出すのだな。そして2人の出演者もよかった! 特に金子さんやっぱすごい。政治的な難しい台詞がけっこうなハイテンポで続くので噛んだりつっかえたりは多かったのですがそれが気にならない熱演だった。泣きの演技とか素晴らしく上手い。この人の出演作も追って行きたいな、と思わせる気になる役者さんである。ああ堪能。