『シャーロック・ホームズ』

思えば私の初恋はシャーロック・ホームズだったかも知れない。(痛)*1
んで、そんなホームズ大スキーの私が映画『シャーロック・ホームズ』を観てきました。
面白かった…ていうかいろんな意味で楽しい映画だった。そしてそれが何となく悔しい。なんだこの気持ち…
以下は感想というよりもツッコミのような。
■一点の曇りもなくアクションコメディ映画だった… アクションラブコメと言ってもいい。

■原作(コナン・ドイルの小説)を基にしたパスティーシュ(模倣作)なんで、原作ファンには思わずニヤニヤしちゃうコネタが当然ながら豊富で、そういう点でムフーとなりながら観てましたが、原作知らない人がこれ観たらどういう感想抱くのかなー。わりと単純でありがちなアクション映画に過ぎないのかも。何度「これはインディー・ジョーンズですか!」と心中ツッコミ入れたことか

■逆に言えば、押さえどころはすべて押さえられてた王道作品てことでもあるかも。愛!友情!冒険!邪悪な敵と謎に満ちたヒロイン!19世紀ロンドンのノスタルジィ!高所での決闘!きゃー!!

■ロバート・ダウニーJr.はさっぱりホームズに見えませんでしたが、観てるうちにだんだんどうでもよくなって(←ここがポイント)、なんかこれはこれでアリかも、という気に。皮肉屋というより嫌味屋みたいな感じで子どもっぽい面が強調されてましたが、それもだんだん可愛く思えてくる。感情的というか人間的というか、「I・A」のイニシャル見ただけで動揺しちゃうところなんて可愛いじゃないか。ホームズはもっと背が高くてスラっとしてるとかそんなボサボサ髪に無精髭なんて状態で外出するもんかとか服装は絶対にフロックコートにシルクハットだろうがなんだそのカウボーイみたいな帽子はとか瞳はやっぱり知的な灰色じゃなきゃとか、そういうことは言わないことにするよ! でもやっぱりこれだけはヒトコト言いたいんだけども原作のホームズだったら信用できるとは言いがたい女から渡されたワインを簡単に飲んじゃうなんてことは絶対にあり得ないけどな!! しかもコルク栓を自分で抜いときながらそこに施されてた細工を見抜けないなんて間抜けなミスは絶対に犯さないけどな!!

ジュード・ロウのワトソンは良かったなあ。かっこいい、かっこいいよワトソン! 若くて溌溂としていて情熱的で好奇心と行動力に溢れていて、おまけに紳士でハンサムだ。そしてホームズのせいでいつもさんざんな目に遭ってファンの涙を誘うところまで完璧だった。折角買った婚約指輪を乱闘のさなかに紛失しちゃうあたりは気の毒すぎて涙なしには笑えない。いや観られない。

■ホームズ・ワトソン・メアリーの三角関係がなんかあまづっぱーくて、観ながらこっちまで甘酸っぱい気分にさせられてしまった… ホームズとワトソンの2人が並んで腰掛けながらなんとなく居心地悪そうにもぞもぞしてるのとか可愛くてたまらん。こりゃ小説の著作権者がピリピリしても無理ないなーとか思った。*2 まあ続編あるなら今の調子のままお願いしたいです。あのね、この微妙な距離感でお互いがツンデレしてるとこがいいの。これ以上発展させなくていいから、2人の仲を。

■メアリーがなんか影のある、ちょっと怖い女として描かれてた気がする。「自分を責めないで」なんてホームズを慰めるような言葉を言った直後に「絶対に解決して」なんて言って、婚約者を危険に巻き込んだ憎い男にわざわざ死地に赴くようにけしかけてるように聞こえるし。いいぞメアリーもっとやれ。

■ホームズ、二回とも変装見破られてましたがどーなんですかそれは。アイリーンに見破られたのはともかく、なにど素人のメアリーにまで見抜かれてんだ。

■つまりホームズのパスティーシュってのはトリックも謎解きもストーリーすらもどうでもよくて、ホームズとワトソンの関係性と「ワトソンくん…気の毒に…(涙)」てあたりが上手く描けているか否かに面白さの全てがかかっているのだな。この映画の中心は謎解きとホームズ×アイリーンの微妙な愛情の行方、とみせかけて(みせかけて?)、キモになってるのはどう考えてもホームズ・ワトソン・メアリーの三角関係だもんな。そういう点で非常によくできた作品だったのではないかと。
あの余韻たっぷりな終わらせ方からして、へんな横槍が入らないかぎり続編はあるだろうから、もういっそシリーズ化していろいろ作ればいいと思います。アイリーンを毎回登場するヒロインにしてさ。そしてシリーズ最終話で彼女の死の真相に迫っていただきたい。*3

*1:初めて読んだ頃のことだから小学生のときですな

*2:http://www.cinematoday.jp/page/N0021615

*3:原作においてアイリーン・アドラーは、彼女が登場した「ボヘミアの醜聞」事件の後に死んだことになっているが、その死の詳細は語られていないため謎のまま