シャーロック•ホームズ対オカルト怪人

シャーロック・ホームズ対オカルト怪人―あるいは「哲学者の輪」事件 (河出文庫)

シャーロック・ホームズ対オカルト怪人―あるいは「哲学者の輪」事件 (河出文庫)

タイトルがタイトルだけに完全にイロモノ小説かと思ってあまり面白さには期待してなかったんだけど、あにはからんや前半すんごく面白くて、「これ絶対邦題で損してる、ちょう面白いのに!」って思ってましたが、後半入ったらこの邦題以外にいいタイトル思いつけないくらいガチでオカルト小説でした。ええ〜… いや、それなりに楽しく読みましたけども… ちなみに原題は単に「『哲学者の輪』事件」です。

前半の何が面白かったって、ケンブリッジ大学に集まる実在の学者たち*1が物語に組み込まれていて、存分にその個性(変人っぷり)を発揮してるところ。事実しか見ない科学者のホームズと、形而上的な話しかできない哲学者たちが一向に交わる気配のない平行線上で完全なこんにゃく問答を繰り広げるあたりの馬鹿馬鹿しさたるや。そんな風に脇役が個性的すぎるせいか、ホームズの描写がいまいち精彩に欠ける気がしてしまうんだけど(クールすぎる!)、そのかわりというか何というか、ここでもやっぱり「常識」と「良心」の代表たるワトスンの存在感が光ってました。

*1:依頼人ラッセルで被害者がヴィトゲンシュタインで容疑者がケインズ