そう思うんだ

ピチチ5公演『おさびしもの』、無事千秋楽。
家に帰る途中、地下鉄に揺られながら、去年の『はてしないものがたり』の千秋楽後、更紗さんと別れてとぼとぼと家に帰る途々、ほとんど泣きそうなくらい寂しくなったのを思い出した。その時ほどではないにせよ、今回もやっぱりなんだかぶわーっと寂しくなったんでした。
いやー、なんでしょうねえ、これ。こんな気持ちになるのはピチチの公演観た後だけ。大好きな舞台で複数回公演観て、ああもう生では観れないんだな、という寂しさを感じることは多々あるけれど、それとはまったく違う種類の寂しさを感じてしまう。
ピチチの芝居に出てくる人物はみんな、開き直ったり不貞腐れたり自分を誤魔化したりしながら生きていて、過大な夢や希望を持たずに手の届く範囲の幸せを手探りしている。現実に戻りたくないなあ、という思いが見せる、夢見がちな一瞬。だからいつもリアルでありつつファンタジックで、些細でかつ壮大。
観客である私にとっても、ピチチの舞台っていうのは「夢見がちな一瞬」なのかもしれない。だから覚めると寂しくなってしまうのかもしれない。
登場人物たちは誰も彼も「いるいるこういう人たち、…っていうかむしろ私だ…」という部分を持っていて、馬鹿だなあ、と思いつつも愛おしくなる人たちばかり。笑いに包んではいるけれどちくちく痛い話が多いのに、観た後嫌な気分にならないのは、彼らを笑い肯定することで、自分のことも「まあいいじゃん」と肯定してしまうからなのかもしれない。
ともかく、野間口さんをきっかけに知ったこの劇団、いまやすっかり劇団そのもののファンになりました。素敵なステージをありがとう、そしておつかれさまでした! とりあえず、12月は何があってもお台場に行きます。*1