『アトミック・サバイバー―ワーニャの子どもたち』とヤノベケンジ『森の映画館』

『アトミック・サバイバー―ワーニャの子どもたち』(東京国際芸術祭2007)
2007.2.22(木)〜25(日)
にしすがも創造舎特設劇場
作・演出:阿部初美
出演:野村昇史(演劇集団円)/谷川清美(演劇集団円)/福田毅(中野成樹+フランケンズ)/永井秀樹(青年団)

http://tif.anj.or.jp/program/atomic.html

どうでもいいけど、にしすがも創造舎に行くのは二度目なのに道に迷った自分のトリ頭っぷりには本気で泣けてくる。










正直申し上げて、2時間の上演中、おそらく40分くらいは寝てしまった…
でも、寝てしまった、なんて書いといて何ですが、演劇の試みとして非常に興味深い舞台で充分楽しみました。これはほんとに。
「物語」のない演劇。プール型の舞台の中で、役者が船や原子力施設の模型を使って「原子力発電の仕組み」「核廃棄物はどう処理されるか」などをレクチャーする。途中、原子力発電所で働く人々を生々しく再現する芝居などを挟み、映像による六ヶ所村(核燃料リサイクル工場試運転中)レポートなども交えつつ。「芝居」というよりもパフォーマンス? に近いような。核反対でも核賛美でもない。そこにある「現状」を淡々と描く手法は好感が持てました。
永井秀樹が抜群に良かったなあ。淡々、飄々としつつちょこっとだけとんがってたりはみ出したり。


で、今回この舞台を観に行ったのは、実は芝居そのものよりもポストパフォーマンストークの方に興味あったから。大好きなんだヤノベケンジ。結果的には、素敵なトークが堪能できたとは言いがたいけど、大満足でした。西巣鴨まで足を運んだ甲斐あるってもんです。憧れの芸術家を間近に見て、「うわあ」とピュアな感動の仕方をしてしまった。司会進行が苦笑しちゃうほどまったくなってなくて、「いきなり細かいこと話しても、僕が何者だか知らない方にはわけがわからないだろうから…」って、自ら経歴を紹介したりしてましたヤノベさん。エライ。
トークの最後に、『森の映画館』という映像作品が紹介されました。木で作られた小屋にお菓子やジュースを常備し、映画を上映するというもの。そこは子どもしか入れない。今回の『アトミック・サバイバー』は、演出の阿部初美がこの作品を観て号泣したことがきっかけになってるそうで、「号泣? ふーん」という程度で12分ほどの映像作品を鑑賞したんだけど…見事に泣きました。何故この映画が、子どもしか入れない映画館で上映されたのか。観ているうちにその理由がわかって「あ!」と思ったらぶわっと涙が溢れた。細かく内容説明したいんだけど、あえてしません。何かの機会があってこの『森の映画館』というヤノベ作品を鑑賞する機会があったら、私と同じように「あ!」って思って欲しいから。ひとつ言えることは、ヤノベケンジという作家の作品にあるのは、必ず人間のしぶとい強さと希望なんだな、ってこと。「核」というデリケートな題材を扱っていても、彼が目を向けているのは「核の脅威」ではなくて「崩壊した世界で生き残っている人間たち」のことなんだな。
いい経験ができました。