東京サギまがい『まっすぐな道でも嬉しい』

若手演出家コンクール2006・東京サギまがい『まっすぐな道でも嬉しい〜うーんなんていうか…へ、Hey!〜』
2007.3.1・3.4
下北沢「劇」小劇場
作・演出:山田能龍
出演:ガラかつとし/鳥羽由記/大出雅也/小春/川本俊一(ぴんぽんず)/大野泰広(ハレルヤ)/松本渉(コンクリートリバー)/ペースメーカー遠藤/寺沢利彦/昔野東映/千葉豪/藤田かおる/渡辺謙章/黒川元晴/曽雌康晴
http://www.sagimagai.com/index2.html
http://www.k2.dion.ne.jp/~jda/wakate_top.html

コンクール3日目。3/1に観てきました。









  • んー。良くも悪くも小さく纏まった芝居だったな、という印象。逆に最近珍しいんじゃないかという感じの、奇をてらわないストーリー中心の芝居でした。悪くないし好きな人はいると思う。私はまったく好みじゃなかったけど。
  • 好みじゃなかった、っていうのは、基本的に家族愛の泣かせる話とか、そういう系統の「イイ話」が苦手だということもある。直球の感動話は見てて恥ずかしくていたたまれなくなっちゃうんですよ、私は。まあこれはあくまでも私の好き嫌いの問題。すぐ後ろに座ってた中年の女性は終演直後に「最後ちょっと感動しちゃった」なんて言ってたから、そういう話だったんだと思います。
  • カラオケ屋で夜勤バイトをする48歳のおじさんが主人公。アフタートークのときに、漫画喫茶で何年もバイトしているおじさんが出てくるピチチ5『反撃バップ!!(改造)』とシチュエーション似てるね、ねんて話がちょこっと出てましたが(実際は「バイトしているおじさん」という以外に何の共通点もないんだけど)、「おじさんがバイトをしている」のを目の当たりにした若者の反応の描き方の違いが、2人の演出家の違いを示していて面白かったです。こちらの山田作品は嗤う、福原作品は俯き目を逸らし聞かなかったことにする。「若者」のキャラ設定も、前者はバンドやってる騒がしいガキ、後者は受験に合格して大学生になり、ゆくゆくは一流の社会人となる礼儀正しい高校生、といったように違うけど、山田さんが「礼儀正しい高校生」を使っても福原さんが「騒がしいガキ」を作っても、同じ演出をつけるような気がします。それが「作風」って呼ばれるものなんだろな、と思いながら興味深く見てました。
  • その「バンドやってる騒がしいガキ」もそうなんだけど、カラオケ店に来店する客たちがわいわいがやがや騒がしくてやたらとテンション高くて、見ていて苛々した。人の話を聞かない、没コミュニケーションの人たち。それはそれでリアルなのかもしれないけど。でもこのシーンは観客を苛々させたら演出家的には「してやったり」なんでしょうかね。
  • カラオケ店の若いバイト店員ヒロキの存在が面白かった。真面目でも不真面目でもない、他人に近づきもしなければ遠ざかりもしない、自分の許容範囲でなら親切にもなる。自分の両手を伸ばせるくらいの範囲で普通に生きてる若者、という感じがリアル。
  • アフタートークのときにカラオケ屋のセットを「よく作ったね!」なんて無邪気に褒めてる審査員がいたけど、たしかに仕込みが2時間と限定されてる中で作り上げたにしてはまあまあ立派なセットと言えたかも。でも、ま、それだけというか… 特に大掛かりな場転もない話だし、取り立てて褒めるほど工夫のあったものだとは思わなかったけど。普通のカラオケ店のカウンターのセットです。