池袋コミュニティカレッジ 明和電機×八谷和彦「ロマンスエンジニアリング」

9日は、池袋コミュニティカレッジにて行われた特別講義、明和電機×八谷和彦「ロマンスエンジニアリング」に行ってきました。
やっぱりこの2人の話は興味深いし、単純に面白くもある。お互いがお互いの引き出し開けまくって中のものを引っ張り出すようなトーク。時には「曝す」ようなことにもなってひじょーに面白かったです。

■まず、社長が学生時代の制作や魚器の話など一通りした後、会場のお客さん(この場合「聴講生」というべきか)みんなで「おかしな発想シート」(ナンセンスな思考をシスティマチックに作るという社長考案のワークシート)をやったんですが、八谷さんの発案で「面白かったものに賞品をあげる」という流れに。

ごく簡単にこの「発想シート」の説明をすると、




1.【STEP1】「モノ(オブジェ)」を書き込む(おそらく思い浮かびやすいようにということで「朝目覚めてから触ったものを順番に挙げていく」というやり方で)。今回は4つ。

2.その「モノ」の枕詞に「おかしな」という形容詞をつける

3.【STEP2】出てきた「おかしな○○」から想像できる「状態」を書き込む

4.【STEP3】その「状態」を組み合わせて想像される「モノ」を書き込む

5.【STEP4】それを絵に描く


という感じ。

今回私がこのステップを経て書いたのは「ふっ飛ばすクレーン」。爆発の勢いで荷物を運ぶ吹き上げ式クレーン*1

■これを絵に描いたわけですが、なかなか八谷さんと社長のウケが良く。自分ではさっぱり面白いと思ってなかったのでとりあえず笑ってもらえて良かった…と胸を撫で下ろしたわけですが、それがまさかの社長賞いただきました。びっくりびっくり。
社長がじゃあこれ、くらいな感じであまりにもあっさり決めたので八谷さんが「そんなあっさり決めちゃっていいの? 前半の人(私のシートが紹介されたのは後半だった)のやつとか覚えてないでしょ!」と尤もなツッコミをすると、社長ヒトコト「それも運」。
確かに運が良かったんだと思うけど、でもまあ何でもいいや。2人をクスリとでも笑わせられたんなら勝負の勝ち負けで言えば勝ちですよ。んふー。

■そんなわけで明和電機の英語版カタログ頂いた! 持ってなかったやつなのでちょう嬉しい。

ありがとう社長!

■しかし私は「人を笑わせること」や「独創的なものを創り出すこと」に非常にコンプレックスがあるので、これは素直に嬉しかったです。特に社長が「ネーミングがいい」と言ってくれたのが嬉しかった。や、でも、ほんとこの「発想シート」は面白いな。

■「発想シート」を実際自分でやったのは初めてでしたが、最後の「絵を描く」という段が結構敷居が高い。面白いものを考え出しても、それを絵にして、さらにそれを見た人が理解し納得するものを描くっていうのはふつうに難しいです。後になって一緒に参加した更紗さんやシャリィちゃんたちと話してたんだけど、「絵を描く」という部分がまさに「エンジニアリング」の部分なのだね。アイディアがあってもそれを表現できなきゃ意味が無い。私も「クレーン」描けないし「爆発」表現できないし…で、しばし筆が止まりました。結局ピクトグラム的な記号っぽい絵と、1・2・3と矢印で過程を表す説明書的イラストで表現。結果的にわかりやすい絵になって良かったのかも。

■社長と八谷さん2人がみんなのシートを見ていろいろコメントしていくのも面白かった。八谷さんが、ナンセンスなものよりもむしろ「アイディアとして使えるか否か」を重視していて面白いなーと思ったり。でも最終的に選んだ「八谷賞」はナンセンスの固まりみたいなアイディアでしたが。ちなみに二つあった「八谷賞」、ひとつは更紗つんが取ったよ。

■ところで【STEP2】の段階で社長が軽く会場の席を回ってみんなのシートを見たんですが、そのときに私のものを見て「指を噛む、つつぬける、吊り上げられる、(ドアの)ノブが飛ぶ…S気質の方ですね」。
SのシャチョにSて言われたヨー。

■ナンセンスで攻める社長に対して、八谷さんは「多少なりとも役に立つ発想法」という切り口で講義。デバイスアート展でのシンポジウムを聴講したときも思ったんだけど、八谷さんてすごくスマートにアート←→ビジネスの間を行き来している印象。それにしてもopen skyがえらいこと面白そうで話を聴きながらドキドキした。いいなあ、飛ぶところを見たい。

■何故ワークショップをやるのか、という質問が出たときに、社長が話すよりも先に八谷さん「自分のためでしょ、自分大好き明和電機!」。そのツッコミを受けた社長が珍しく恥ずかしそうにしてた(図星だったんだろうな…)のにひじょーに驚きました。おお。

■「サンクステイル」や、「視聴覚交換マシン」についている羽を指して社長、「八谷くんのロマンスオプション」。人間の欠落部分(尻尾とか羽とか)を補う傾向にあることを指摘されて八谷さんがすごい納得顔をしていたのが印象深かったです。

■最後、いったんお開きにしてから、八谷さんの「視聴覚交換マシン」体験会。体験してきました。
「視聴覚交換マシン」は「お互いの見ているものを交換する装置。他人の視点でしかものが見えなくなってしまい、相手の立場に強制的に立たされてしまう。 アイデンティティの境界を曖昧にすることを目的として制作された作品」*2ということですがようするにAの人の視覚聴覚をBの人が持ち、Bの人のそれをAの人が持つ、というもの。これを装着してAさんBさんが向かい合うと、自分の姿が正面に見えます。これがけっこう感覚を狂わされる。自分の姿を捉えても、そっちに向かって行っても相手には辿り着かない。身長差もあるから視界が違う。面白い体験させていただきました。

■講義といっても堅苦しいものではなく、仲の良いアーティスト2人が、楽しくみんなで話しましょうよ、みたいな、そんなひじょーにフラットな講座でした。アーティスト本人たちがこの講座の受講料がお安くないことを知ってびっくりした、と言ってましたが、金額とか気にならないくらい充実していたし楽しかったです。
今後は八谷さん絡みのイベントなんかも、可能な限り足を運びたいなー。

*1:そもそも吊り上げるからこそ「クレーン」なんだから、吹き上げ式クレーンなんておかしいんだが…

*2:http://www.petworks.co.jp/~hachiya/works/IDCM.html