ニッポンの河川『テキサス・チェーンソー・マサカリ』

ニッポンの河川第二回公演『テキサス・チェーンソー・マサカリ』
2008.12.23〜28
渋谷ギャラリー・ルデコ
脚本・演出:福原充則
出演:森谷ふみ 光瀬指絵
音響:森谷ふみ
照明:光瀬指絵

http://jriver.exblog.jp/

『二人の女優が、音響、照明を自ら操って何かに取り憑かれたように演技するお芝居です。上演時間60分弱で2000円!安い!早い!拙い!イエイ!』
という謳い文句の公演。27日のマチネ。










山奥の小さな村、許婚のムラオを置いて小さな世界から出て行くアユミ。アユミをヒッチハイクでトラックに乗せた、元アイドルのトラック運転手。東京に出たアユミと一緒に武富士ティッシュ配りのバイトをする女。トラック運転手は元はアイドルを夢見る川越駅東口のヤンキーで、日本で騙されタイでアイドルとしてブレイクする。川越駅東口の小さな世界に戻りたがるその恋人。ティッシュ配りからホットペッパー配りのバイトになり損ねた女はささやかな自尊心を保てず実家に帰っていく。自分を置いて村を出たアユミが忘れられないムラオはタイでムエタイ選手になる。彼の心の支えは、何故かタイでヒットしていた日本語の歌謡曲
それぞれの人生、ささやかな自尊心と優越感と挫折感と幸と不幸とが少しずつ繋がっていく群像劇。これだけの登場人物とてんこもりのエピソード、これをたった2人の女優がたった50分程度の長さで演じきる。スピード感溢れるテンポのいい展開は、でも決してドタバタ感や慌しさはなく、もちろんストーリーの混乱もなく、むしろじっくり彼らの人生を紡いでいく。
第一回公演『トビウオ人間VS形の無い何か』のときのような、胸にきゅうんと迫る種類の感動は今回はないけれど、それでもやっぱり「福原充則の女子な部分」が存分に発揮された芝居だったと思う。コント調でしょっちゅうゲラゲラ笑ってるのに、切なく寂しい雰囲気が最後にしみじみと残る。限られた空間、限られた機材で最大限に効果を発揮する演出も相変わらず見事。

女優2人がすごい良かったなー。光瀬さんも面白くて良かったんだけど、今回森谷さんが何しろ良くてちょっとびっくりした。正直、今まであまり上手い役者だという認識がなかったもんで…(って、主にKKPでしか観た事なかったんだけども) さまざまなキャラクターの演じ分けもそうなんだけど、とにかく振り切れた演技が素晴らしかった。福原さんが役者の活かし方の上手い人だってことかなー。とにかく良かった。

余談ですが客席にすごい小さいお子さんが2人も来てて、大丈夫か福原作品、とちょっと思ってたんですが案の定何十回と「セックス」って単語が連発されててあれ大丈夫だったのかしら。
まあ余計な心配だな。


2008年最後の観劇、いい作品で締められてほんとに嬉しい。2月の福原充則作・演出『その夜明け、嘘。』ががぜん楽しみになりました。