ナイロン100℃『世田谷カフカ』

NYLON100℃ 34th SESSION『世田谷カフカフランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする〜』
2009年9月28日(月)〜10月12日(月・祝)
下北沢 本多劇場
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:三宅弘城村岡希美植木夏十/長田奈麻/廣川三憲/新谷真弓/安澤千草/藤田秀世/皆戸麻衣/喜安浩平/吉増裕士
杉山薫/眼鏡太郎/廻飛雄/柚木幹斗
猪岐英人/水野顕子/菊地明香/白石遥/野部友視/田村健太郎/斉木茉奈/田仲祐希/伊与顕二/森田完
中村靖日横町慶子

http://www.sillywalk.com/nylon/info.html

5日のソワレ。素晴らしかった!!
途中休憩挟んで約3時間という長い芝居で*1、観終わってからぐったり疲れはしたんだけど、見ごたえのある作品を観たぞー! っていう充実感溢れる疲れ方でした。面白かったなあ。










ケラ自身あいさつ文で「劇団でしか作れない舞台が出来上がった」と書いていたし、ブログなどでレビューや感想をざっと見たところでもよく言及されていたことだったけど、たしかに「劇団」という強み・利点を存分に生かした作品だったように思う。ケラにとっておそらくは最も身近で最も気を使わない劇団員たち(しかも多くが研究生という若手)を使って、やりたいことをやりたいようにできた、そういう気安さや自然さがあって、でも原案に「カフカ作品」というシバリもあるからなあなあにならずにシメるとこはきちんとシメた、といった感じで、メリハリのきいた作品だった。こういう芝居観るとゾクゾクする。
この作品がエチュードから芝居を構築していく、というやり方で作られていっているというのはケラのブログで読んでたので、当初、昔ケラ地図でやった『暗い冒険』のような、思い切って不条理で滅茶苦茶な作品を思い浮かべていて、その点で正直なところ「面白いものが出来あがるのか…?」と多少不安に思ってたんだけど(いや、『暗い冒険』は、あれはあれで好きですが。映像でしか観てないけど)、確かに不条理な物語ではあったんだけど滅茶苦茶さは感じなくて、むしろ構成はものすごく緻密。くるくると表情を変える舞台装置も面白かった。
そしてやっぱりナイロンは役者の層が厚い! いつもナイロンでは二番手くらいの人たちでもめちゃくちゃ上手いし役者としての個性も豊か。研究生ではやっぱり猪岐英人と水野顕子の2人が抜群に良いですね。好きだわこの2人。あと、舞台の中村靖日が観たい、っていうのが今回の鑑賞目的のひとつとしてあったんだけど、やー、めっちゃくちゃ良かったです。主人公が理不尽で不条理なやっかいごとに巻き込まれて為す術のないという物語を紡ぎだす、カフカという暗い情熱に満ちた人物。私はカフカのことはまったくといっていいほど知識ありませんが、あのちょっとハチの大きい頭と細い体という外見も含めて、自然と、カフカってこういう人だったんだろうな、と思い込むくらい見事にハマってました。説得力のある演技のできる役者ってやっぱりいい。
思えばカフカは大昔に「変身」を読んだきりだ。これはとりあえず「審判」「城」「失踪者」の三冊は読んでおかねばなるまいよ。未完の長編なんて、読んだら結末が気になってキリキリしちゃうかもしれないけど。

*1:ナイロン(というかケラ作品)においてはたいして珍しくもないけど