ビルマVJ 消された革命

ビルマVJ 消された革命』を観てきました。
軍事政権下のビルマミャンマー)。2007年、40年にも及ぶ圧政に立ち向かおうとデモを敢行した僧侶と民衆。その彼らを追う現地のVJ(ビデオジャーナリスト)たちの、命をかけた活動。さらにその姿を追った迫真のドキュメンタリー。
言論統制報道規制が厳しく敷かれた今のビルマで、秘密警察にマークされながら隠し撮りを続けた映像を世界に配信しつづけるVJたちの姿を通し、「報道」の持つ力を見せ付けるとともに、世界に見捨てられた国で何が起きているのか、それを世に伝え、また問いかける。ここに映し出されているのがノンフィクションであることが怖くて震えながら観た。
渋谷のシアター・イメージフォーラムで上映中。バリバリに社会派な映画ではありますが、どんなエンターテイメント映画よりもはるかに面白い。面白いという表現はこの映画に関して非常に不謹慎かも知れないけど、映画は観てもらわないことには始まらないし観てもらうためには魅力がないと話にならないし、そういう点で言えば大変に映画的魅力に溢れた作品です。「とにかく面白いから観て!」って言いたいし、そんなちょっとした興味でこれを観たことで何がしか胸にズドンと感じるものがあればいいんじゃないかと思ったりしています。ビルマの今に対して我々ができることといえば関心を持つことくらいかも知れないけど、そんな些細に心に引っ掛けているだけでも無関心よりははるかに意味のあることだと思う。










秘密警察の影に怯えて沈黙する民衆。
秘密警察に追われながらもゲリラ的に集会を開いて民衆にデモを呼びかける民主化運動家たち。
「政治には介入しない。しかし民衆が苦しんでいるときにはいつだって立ち上がった」、40万人もの一大勢力であるビルマの僧侶たち。
ソニーのハンディカメラだけを武器に、世界にビルマの「今」を伝えるVJたち。彼らもまた、カメラを持っているというだけで秘密警察に逮捕される危険に晒されている。
2007年、僧侶が中心になり始まった大規模なデモ行進はあっというまに民衆をも巻き込んだ大行進となりヤンゴンを埋め尽くし、アウンサン・スー・チー氏の自宅にまで至る。彼女と僧侶が対面する画像が、わずかに世界に配信される。そして軍事政権も強硬な方針を転換せざるを得ないのではないかと思われたが、その運動は結局、丸腰の僧侶と民衆に軍が実力行使するという最悪の形で収束することとなってしまう。一つひとつの映像、一人ひとりの言葉のリアルさが、映像報道の力を見せつける。兵士に追われてちりぢりになるデモ隊や、背後から撃たれて倒れる日本人ジャーナリストの映像、河に遺棄された僧侶の遺体。VJたちも連行されたり身を隠したりして組織が壊滅状態になってしまう。
この映画の公平さを感じたのは、最前線でデモ隊と対峙している下級兵士たちの多くは非常に貧しい生活であることをちゃんと伝えたこと。彼らの多くは食うために兵士となった。軍上層部の指令に従わないことは難しい。それは何かきっかけがあれば下級兵士も結託して軍に刃を向ける可能性があることも示唆する。わずかながらの希望であり、そんな彼らが丸腰のデモ隊に銃を向ける現実もまた恐ろしいものとして目に映った。
最後、タイに潜伏しながらVJたちの指揮を執っていた、この映画の語り手たる役を担っているやはりVJの「ジョシュア」が、ビルマに密かに戻るところで映画が終わる。「ジョシュア」たちの闘いはこの後も続いていくのだ。
そのすべてに緊張しながらじっと見入ってしまった。ほんとうに良質な映画を観たと思う。