グラナダTVドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」

ところで、「日本語版はすごい編集されちゃってて、ささやかで面白いシーンがことごとくカットされてるのが不満。だけど露口吹替のホームズも捨てがたい魅力が」という点で、シャーロキアンの友人と完全に意見が一致しました。どうでもいいですね。

第9話:ギリシャ語通訳

■陰惨な話だなー…

■原作は、シャーロックの兄・マイクロフト登場、という以外、正直あまり面白味のない作品。ですが、ドラマ版たいへんなことになってるね!!(嬉)

■原作では、後々妹は兄の仇を取ったかも?ということになってますが、ドラマ版では妹が兄をきっぱりと見捨てたような感じ。なんだか救いのないラスト。暗い話がますます暗い…

■マイクロフトがなんだか陽気なおじちゃんとなってる。原作から受けるイメージとはだいぶん遠いですが、でもこんなお茶目なマイクロフトも好きだ。完全にコント担当という趣。陰気な物語に一服の清涼剤。(さわやかでもないけど)

■ケンプ氏の悪人っぷりがたまんない。こういう悪人大好物!(基本ヒール好きです)

■ホームズ兄弟を見るワトソンの目が好奇心でキラキラしてて、ああもうほんとワトソンてばかわいいなあ!(最近ワトソンへの愛が止まりません)



第10話:ノーウッドの建築業者

■私にとっては完全にワトソン萌えの回。ホームズ、あんたはほんとに良き助手そして良き友を持ったよ。鬱状態に入っちゃったホームズを見守る様が保護者のようだ。あのゆっくりとした口調で語りかけるとことかさー。もー。このときばかりは珍しく素直なホームズにもきゅんとする。書類を調べ銀行にも調査に行き…と、助手としても申し分ない働きっぷり。かっこいいぜワトソン。

■ところでベイカー街の部屋の思い切った汚さがいいですネ。

■鬱なホームズが奏でるヴァイオリンはもう不協和音でしかないのだな…
朝っぱらから(ヘタしたら一晩中)あんな鬱々とした曲ともいえないような曲をかき鳴らされて、聴かされる方も滅入るだろうに、それでもなお友人のことを気にかけるワトソン。…って思うと涙止まんないよ…

■レストレード役の俳優さん、イメージぴったりだなー。原作における外見的描写としては「ブルドッグのような」というものもあるけど、私の中では「イタチのような」という描写の方がしっくりくる。ので、この配役はかなり完璧。

■レストレードくんはやや鼻持ちならないところがありますが、基本的にすごくいい人だと思うのだ。鼻持ちならない奴にしてるのは、ホームズのスコットランド・ヤードをバカにした態度のせいで、いらん対抗心を燃やしちゃってるからだと思うのね。

■と、いったあたりでホームズとレストレードのやりとりも楽しい今回。ホームズも案外ムキになって噛み付いたりとかして、大人げない2人。

■原作で「いやいや、いくらなんでもそれは」って思った焼死体の秘密も、ちゃんと浮浪者失踪事件て形でうまくまとめてて、グラナダ版えらい!


第11話:入院患者

■これもずいぶん陰険な話だけど、なんとなく好き。

■今回の冒頭は床屋での一幕。ドラマオリジナル。ああもう2人の会話がかわいいったら。これも日本語版じゃごっそりカットされてんのなー。まあ確かに本編にはまったく関わらないサービスシーン(←誤解)だ。

■このシリーズにおいてワトソンは食いしん坊キャラなのか…?(食事の話を持ち出すのはたいていワトソン。原作ではそんなことないのに)(「まだらの紐」のときも、朝食をがっついてるワトソンが「1時に待ち合わせしよう、それまでに君の朝食が済んでいればだが」なんてホームズにからかわれてるしなー) 今回も、出されたお菓子をぱくぱく食べてる。かわいいよう。おにぎり持たせたい。

■部屋中をひっかきまわして紙ゴミ(ホームズにとってはゴミじゃなかろうが)だらけにするシーンが好きすぎます。落ち着き払って自分のスクラップブックを差し出すワトソンも、散らかった部屋に失神寸前のハドソン夫人も。

■ホームズが散らかし放題散らかした部屋を出た途端にハドソン夫人とばったり出くわした瞬間のワトソンの表情が面白すぎる。



第12話:赤髪連盟

■コントのような前半の展開に笑って観てたらいきなりプロフェッサー・モリアーティが出てきてびっくりしたよ! そうか、グラナダ版じゃ教授の登場はこの回だったか…

■やっぱりこの話はホームズシリーズの中でも珠玉だと思う。いろいろツッコミどころは多いけどさ。(それはまあいつものこと)
コントのようにドタバタした喜劇的な前半から一転、後半の緊迫した捕り物へ、という展開が見事だし、ドラマではさらに、教授との今後の避けられない対決を予想させる陰惨さも最後に加わって、いやがおうにもわくわくと盛り上がる。

■部屋を出て行こうとしたワトソンを引き止めるため、長椅子をハードルのように軽々と跳び越すホームズ。グラナダ版のこういう場面、ほんとに気がきいてる。

■ウィルソン氏の体験談の途中から笑いを堪えるのに必死なワトソンと、それを咎めるように見ながらもやっぱり笑っちゃうホームズ。

■銀行のシーンのホームズがなんかアメリカ人みたいな格好してるなー。あれが原作に出てくる「水夫用ジャケット」?

■私は煙草はキライですが、煙草を吸う男の姿にはやっぱり一目置かざるを得ません。というわけでホームズとワトソンが本屋の店先と下宿の玄関先で煙草をふかしながら話をするシーンは絵になりすぎてると思うのね。かっこよすぎる。

■ここでさりげなく、ホームズの銀のシガレットケースが印象づけられてる。これはやっぱり次回の「最後の事件」におけるワトソンへの別れの手紙の伏線よね? 細かい。

■「きみは人類の恩人だよ」というワトソンのセリフは原作通りですが、このセリフに続いてモリアーティの姿が映るのは当然ドラマオリジナル。(本来この話にモリアーティは出てこないから) このセリフにこのシーンをくっつけたグラナダ版えらすぎる!!



第13話:最後の事件

■原作において私はこの話がいまいち好きじゃないのだが、ドラマ版見ててその理由がわかった。この話にはユーモアが欠けてるんだ。
まあ仕方ないけどさ、物語の性質上…

■そんで、私にはモリアーティという悪人がいまいち魅力的じゃないんだよな。先の「ギリシャ語通訳」に出てきたケンプ氏のような、やや変質的な悪人の方が好きだよ。

■冒頭の、ホームズが刺客に襲われるクダリや、ベイカー街の部屋での教授との会見のシーンはやっぱりちょっとドキドキわくわくします。

■ハドソン夫人かーわいいなあ…

■モリアーティの腹心っぽい美青年は誰ですか。これはやっぱり、おっさんしか出てこない今回の物語に華を添える役割を担って投入されたオリジナルキャラですか。

■ワトソンがイタリア人老牧師に変装したホームズに驚かされるシーンは、本作品のほとんど唯一のユーモラスなシーン。

■ワトソンが好きすぎて、すっかり「ワトソンをいじめる奴はこの私が許さないけんね!」という心境になってしまっているため、ワトソンの悲しむ姿が痛々しくて見てられない。最後には喪服姿まで。ううう。
大丈夫だよワトソン、ホームズは死んだとみせかけて3年間も旅行を楽しんだ挙句に著作まで一冊モノしてひょっこり帰ってくるんだからね! って、その肩を掴んでぐわんぐわん揺らしながら言ってあげたい。

■先日読んだ「聖☆おにいさん」5巻に、イエスが死後3日で復活したときの「気まずさ」のネタがありましたが、ホームズが死後3年で復活しちゃうことを知ってるので、見てるこっちがなんとなくもんのすごく気まずい気分にさせられる「最後の事件」。あえて言うけどドラマも原作に劣らず迷編だ!(←褒め言葉と取っていただければ)

■それにしても大掛かりな撮影であったねこれは。すごいわ。

■デヴィッド・バークによる初代ワトソンもこの話で最後。原作のイメージでいえばどっちかといったら落ち着いた雰囲気の二代目ワトソン、エドワード・ハードウィックの方が近い気もするけど、陽気で少年のような好奇心に満ちていて、そしてややちゃっかり者のデヴィッドワトソンはほんといいキャラクターであった。大好き。



第14話:空き家の怪事件

■法廷のシーンにさりげなくホームズが映ってる…しかもけっこう頻繁に…

■ホームズがワトソンを介抱するシーンをカットするなんて信じられない!!>日本語版

■「信頼して欲しかったな」と言うワトソンの、寂しそうで、それでいてなお恨みがましくない態度は胸キュンものだ。そんなワトソンに、珍しく真情あふれるフォローを入れるホームズ。表情が必死。きゅん。

■ライヘンバッハの滝の回想シーンで、ホームズが思わずワトソンに呼びかけようとして思い止まるシーンは、ドラマオリジナル。ホームズの取った酷い行動(正当な理由があったにせよ、あんなに親友を悲しませるなんて!!)をやんわりとフォローするいいシーンです。

■でもその直後、「親身ではあるが役に立たない方法で僕を探していた」という酷いセリフが原作のまま取り入れられててプラマイゼロだね☆

■映画『シャーロック・ホームズ』ではガンガンに拳銃を使用してるホームズとワトソンですが、私の記憶が正しければ、だけど、2人とも人に向けて銃を撃ったことってないんだよね。(「三人ガリデブ」のときは、ワトソンが撃たれるという非常事態においてさえ、ホームズは手にした銃で相手の頭を殴るという攻撃方法を取っている)(もっとも、その後めちゃくちゃ感情的な脅し文句を相手に吐いてますけど) 「最後の事件」のときも今回も、ホームズとワトソンは拳銃を手にしているが一発も撃っていない。

■と、いうわけで、今回も殺されかかっているホームズを救うためにモラン大佐の頭を銃の台尻でぶん殴るワトソン。えらい!

■ワトソン、赤いトルコ帽似合いすぎて面白すぎる。

ペルシャスリッパから煙草を取り出してパイプに詰めるのかと思いきや無頓着に床に撒き散らかして捨てる、っていうささやかなシーンが好きです。ホームズらしい。

■最後、シャンパンで乾杯するときのホームズが長椅子に立膝。さりげない面白シーン。





で、つい観たくなってこれ買ってしまった…

シャーロック・ホームズの冒険DVD BOOK vol.14 (宝島MOOK) (DVD付)

シャーロック・ホームズの冒険DVD BOOK vol.14 (宝島MOOK) (DVD付)

DVD BOOK「バスカビル家の犬」。

■TVじゃスペシャル版として放送されたんですかね。なんか詰め込みすぎ感あって、仕上がりとしてはいまいちな印象。主要ストーリーを追うのにせいいっぱいな感じがする。
原作の好きなシーンがことごとくカットされてる上に、人間関係や会話の機微もうわっつらをなぞっただけな感じと言うか。もうちょっと掘り下げた人間関係とか見たかったよー。
でももちろん、充分面白く観られます。

■ホームズがロンドンで、ヘンリー卿の尾行者にまんまと撒かれた上に、自分の名前を名乗られてしまうエピソードとかちょう好きだったのに…

■モーティマー博士の無邪気な失言にホームズが大人気なくムっとするシーンもなかった。

■岩屋でのワトソンとの再会も、あっさりしすぎ。ワトソン、もっと驚きなよ! そしてもっと拗ねていいよ!

■ワトソンと別行動中のホームズの動きを追うのは面白かったけど。

肖像画からステイプルトンがバスカビルの一族であることを見抜くクダリが簡単に片付けられすぎてる!! このシーン好きなのに!

■クライマックスで、濃霧のせいで自分の計画が台無しになりはしないかとやきもき苛々するホームズももっと見たかったよ。

■そんな具合にすべてがあっさりと片付けられてるのに、「セルデンが脳手術を受けた」というオリジナルエピソードが加わってる。これは完全に蛇足な気がするよ…?

■出したシチューをワトソンに「まずそうだ」の一言で一蹴されて、「冷めたから…」とか言い訳するホームズ。このオリジナルシーンはかわいい。

■「能動的なホームズと受動的なワトソン」ていう原作の基本を引っくり返した上で笑いを成り立たせてるオリジナルエピソードは楽しくていい。「まがった男」のラストシーン(ワトソンがホームズの見栄っぱりな嘘を見抜くシーン)とか完全にこのパターンだよね。

■そんでもってこの頃のジェレミーホームズの髪が短めなのがものすごい不満な私。

■でもマフラー姿は萌える。