グラナダTVドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」

10巻まで見たところで11巻目が宅配TSUTAYAでなかなか借りられず、しばらくオアズケ状態でしたがようやっと観られたよー。
例によって文章の頭が悪いので畳みます。

第15話:プライオリ・スクール

■原作をだいぶんアレンジしてる。音楽に聖歌が使われたりして雰囲気も違うし、ちょっと異色作。

■事件も幼児誘拐・殺人と陰惨だし、ベイカー街のシーンは少ないしユーモアも少ないし…で、暗い気分になる作品だ…

■原作ではスキャンダルを恐れるホールダーネス公爵の意を汲んでの大岡裁き(?)で国外逃亡しちゃうワイルダーが、因果応報的に事故死してしまう点も原作との大きな相違点。暗いよ!!

■ワトソンの食いしん坊キャラは、エドワード・ハードウィックに代替わりしても健在。

■「私は貧乏ですから」っていうホームズの名セリフがない… 報酬に対する態度が原作とぜんぜん違うのな。ドラマだと、6000ポンドの小切手を切らせる流れがいまいち不自然じゃないかなあ。


第16話:第二の血痕

■期せずして、かどうか知りませんけど、「金」「名声」という、本来ホームズがあんまり拘らないものに対して珍しく彼がいささかの関心と野心を見せた物語が二つ続いたな。

■ところでなんて見どころ満載な一編だろか! 楽しい! 相変わらずツッコミどころ豊富だけどもそんな些事など気にならない名作だ。

■「女性は君の専門だ」って言われてしっかり頷くワトソン。もう、そんな君が大好きさ。

■日本語版、「かわいそうに」って言う露口ホームズのまったく同情心の感じられない言い方!

■事件に関わりだすと途端に、ただでさえまともに営めているとはいえない日常生活が完全に疎かになるホームズ。マッチを火がついたまま放り捨ててボヤを出すドラマオリジナルシーンがちょう楽しい。

■レストレードくんがいじらしい。辻馬車に料金を払って「おつりはいい」って言うときの悲しそうな口調とか。憎めない。

■この物語の一番の功労者は実はレストレードっていう。

■そのレストレードの目を盗んで、敷物をひっぺがして床を調べるシーンが楽しすぎる。ワトソンとのコンビっぷりも見事。

■巡査に写真を見せて「どう?」とでも言うように軽く首を傾げるホームズが可愛い。(←萌えポイント細かすぎ)

ホープ邸に向かうホームズとワトソンが並んでカツカツと歩いてるシーンが良い。それに続くシーンで、ぐるっとカーブした道をきちんと通るワトソンと、道とかお構いなしにずかずかと芝生を通って近道しちゃうホームズ。このドラマのこういう細かい気の利かせかたがほんとニクい。

ホープ邸での一連の駆け引きは、クライマックスに相応しい面白さ。取り澄ました顔で煙草に火をつけるホームズがかっこよすぎて憎たらしいぜ。

■「外交上の秘密でして」って名セリフだねえ。

■ラストシーンで、会心の事件解決に思わず飛び跳ねるホームズも可愛いけれども、ホープ夫人の眼差しを受けて、控えめに、でも満足そうにちょっとだけにっこりする、あの目を伏せた表情が絶妙。

■それにしても、こんな物語が成り立ちえた、当時のイギリス上流階級社会の閉鎖性と複雑微妙すぎるヨーロッパ情勢こわすぎる。

■ルーカスがホープ夫人の手紙を入手した先がミルヴァートン…なんていう原作にない背景がオマケについてたら楽しかったのに。そういうイタズラはこのドラマだったら充分許されるだろうになー。


第17話:マスグレーブ家の儀式書

■原作をほどよくアレンジしてる感じ。原作より面白いかも。ホームズがなんで風邪っぴきなのかは謎だけども。

■ホームズがコカインのせいで完全に躁状態になってるんだけど、日本語版だとコカインのシーンがきれいにカットされちゃってるので、なんでホームズがマスグレイヴが不審な表情するくらいにハイテンションなんだかわからないな…

■それにしてもホームズのコカイン癖に対するワトソンの逡巡が切ない。

■コーヒーぶちまけられるのは、そりゃもちろんワトソンくんの役目だよね。

■狩りから戻ってきてホームズに獲物を見せるワトソンと、それに応えるホームズ。なにこの少年のようなやりとり。(きゅん)

■ラスト、池に浮かぶレイチェルがオフィーリアのよう。おそらく意識しての演出なんだろう。原作にないシーンだけど、宝探しという冒険に満ちた物語に陰惨なラストのコントラスト。


第18話:修道院屋敷

■明け方に叩き起こされ、二度寝しちゃってホームズに怒られるワトソン。萌え死にさせる気か!

■でもこのシーン、日本語版でごっそりカットされてる… 露口ホームズの口調で「服を着たまえ!」ってやって欲しかった…

■男2人の大乱闘の横をすり抜けて女主人の元に駆けつけるテリーサ。強すぎる。

■初めのシーンでワトソンのメロドラマな物語描写をまたさんざんにこきおろすホームズ。しかし甘いメロドラマな展開という点においてはシリーズでも屈指の出来、という皮肉な展開。

■思いがけず急に美人に抱きつかれたホームズが動揺してビクビクしてるのが楽しい。


第19話:もうひとつの顔

■いつも思うんだけども、このタイトルは完全にネタバレではないのか…(新潮社の延原訳を継承してるんだろうけど) 素直に原題どおりの「唇の捩れた男」じゃダメなの??

■今回もホームズに叩き起こされるワトソンという楽しいシーンが。なんとかもう少し寝てたいワトソンと、あくまでもワトソンを引っ張って出掛けたいホームズの攻防。どんだけ仲いいんだ。

■しかもワトソンの足くすぐるとか…

■「(収入が)中流以上だ!」「興奮したもうな、警部」。イギリス流階級社会ギャグ。



第20話:6つのナポレオン像

■今回は完全にレストレードフューチャーの回。寝起きボサ髪という無駄なサービスショット(←誤解)まで。日本語版でカットされていたのはなんとも遺憾。

■なんか知らないけど妙に仲良くなってるワトソンとレストレード。対ホームズ同盟みたいな友情か?

■原作ではホームズの説明で触れられてただけのイタリアマフィアの話がきっちりと物語に組み込まれているおかげで、原作よりも話の筋が納得しやすくなっている。

■そして凄味が増している。完全にゴッドファーザーの世界。

■「2分で来いよ!」と、前話「もうひとつの顔」での仕返しをするワトソン。しかし日本語版だと前話でホームズがワトソンに「5分後!」と言い渡すシーンがカットされちゃってるんだよね。

■ベイカー街の居間で、ホームズの肱掛椅子に座っているレストレード。でかすぎる椅子に沈み込んで足をぱたぱたさせている様が子どものようでかわいい。ホームズが座ってるとでかいと感じないんだけどね、この椅子。体格差…

■テーブルクロス引き!(何テイク撮ったのか知りたい)

■ホームズを見守る2人のなんとも言えない表情。絶妙。

■この話のラスト好き。レストレードとも、初めて職務を越えて友情を結ぶことができた瞬間。最後目を逸らしたままぬっと握手の手を差し伸べるホームズの、感情を表わすことが苦手な不器用さにずっきゅんする。


第21話:四人の署名

■このシリーズは昔ひととおり観てる筈なんだけど、この21話だけ見逃してたかな…まったく記憶にない。トンガのあの衝撃的な風貌を、いくら私がトリアタマだからって覚えてない筈はないのだが。

■っつーかそれよりも原作では事件なんかよりもむしろ物語の中心を占めてたロマンス小説要素が完全にカットされてるじゃないかうおおおお!!

■いや、たしかにシリーズ続けるんならここでいきなりワトソンが結婚しちゃうわけにはいかないだろうけどさ。でも…えー。もうちょっとワトソンの心情を丁寧に描くとかさ… 冒頭部分とラストシーンでわずかにワトソンがメアリに特別な感情を抱いていたことが匂わされているけども。

■舞い上がったワトソンがくだらないことをおしゃべりするシーンもメアリが不安のあまり思わずワトソンの手を握りしめる感動的なシーンも、メアリが住み込み先で家族のように温かく遇されているのを見てワトソンがあったかい気持ちになるシーンも、メアリが莫大な財産を相続する可能性を知ってワトソンが落ち込んだ上で自己嫌悪に陥るシーンもない…(…って書き出して思ったけど、この「四人の署名」て物語は原作シリーズ中でも異色作だったんだな…)

■もちろん、ワトソンの婚約を知ったホームズの「そんなこったろうと思った! おめでとうを言う気にはなれないね」っていうセリフもない。このセリフちょう好きなのに。ジェレミーと露口さんの声で聞いてみたかったぜ。

■しかし、完全版だと「魅力的な女性だ」と言ったワトソンに対してホームズが言ったセリフが「そうか? 気付かなかったな」っていう字幕になってて、原作通りの「女の魅力に無関心だしワトソンの心情にも無頓着」な冷血人間ホームズなんだけど、日本語版だと「そうだったのか…気が付かなかったな…」ってなってた。これってホームズが「そのときまで気付かなかった」のは「メアリの魅力」ではなく「彼女に対するワトソンの恋心」であった…って解釈でいいんだよね? わー翻訳のマジックだー! ああこの「そうだったのか…」の絶妙のニュアンスを文章で表現できたら! なんか、ホームズがちょっとニヤってしてる感じ!  なにこの日本語版のラストちょう素敵…

■原作だとラストはホームズがコカイン打って終わるのに!(笑)

グラナダ版は長編作るといまいち大味になるなあ…って思ってたけどこの日本語版最後のセリフでこの作品の評価が自分の中でちょう上がった。

■ところでバーソロミューの死体、ありゃ人形ですよね…? 生身でやってたとしたらえらいことだ。ピクリとも動かなかった上にワトソンにわさわさと動かされてたけど。しかし人形だとしたら相当精巧。

■ホームズの「押し込み七つ道具」登場。なんかの工事業者のようだ。

■ミセス・ハドソンはこのやっかいな下宿人にほんとよく尽くしているなあ。本来なら叩き出してもいいやっかいさだ。部屋は掃除しないし掃除させてくれないし、浮浪児には部屋に上がりこまれるし人使い荒いしその際の態度も酷い。

■トービーに引きずり回されるワトソン。(萌)