夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです

村上春樹のインタビュー集。面白かった!「興味深い」という感想よりも、ごく単純に「面白い!」って思った。つまり、この本に出てくる表現を借りれば、読み手を興奮させる「ナラティブ(物語)」があった、ってことなんだと思う。そしてこれも非常に面白いなと思ったんだけど、村上春樹はインタビューに答えても(つまり話し言葉でさえ)それを文章に引き移すと「村上春樹の文体」になるのだな。本人もインタビューの中で言ってるけど、村上作品の中に出てくる会話は、普通の会話としたらやや不自然である。しかしそれはやはり彼の身のうちから導き出された言葉であり会話なのだな、と、「村上春樹の文体で語る村上春樹」の言葉を文字で追いながら思ったりした。
私は初期の頃の村上作品のファンで(『ねじまき鳥クロニクル』からちょっとついていけなくなってしまった)、最近の作品は読みはするけどそこまで深くはまることもなく、読み返したりもせず(「鼠三部作」とか『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』とか、何回も読み返してるのに)、内容も正直あんまり覚えてないし、あまり熱心な読者ではなくなってしまっていたのだけど、彼のストーリーテラーとしての才能と、それを制御するストイックさ、常にハードルや制約を設けて作品を成長させていく挑戦者としての姿勢をこの本で知ることができて、彼の作品の変化をもう一度辿ってみたいと思った。つまり、もう一度彼の作品を「楽しみたい」と思った。作品によっては興味が持てるもの持てないもの、共感できるものできないものといろいろ出てくるだろうけど、それでももっと彼の作品を知りたいという、好奇心が湧いた。この「好奇心」が刺激された、っていうのがすごく重要。物語のページを繰る喜びを、思い出させてくれた、というか、認識させてくれた、という感じ。