劇団兄貴の子供『昨日拾ったコレから』

劇団兄貴の子供第一回公演『昨日拾ったコレから』
2006.10.27(金)〜29(日)
阿佐ヶ谷シアターシャイン
作・演出:小田学
出演:山本圭祐、渡猛、碓井清喜、東美伽、増元拓也、若原めぐみ
http://www.k2.dion.ne.jp/~kaeru25/aniki/info_01.html

28日、昼公演。
仕事にうんざりし好きな子にも振られて、人生に希望が持てない男。自殺を決意した夜、公園に落ちていたおじさんを拾う。記憶をなくしたおじさんは自分は妖精だと言い張り、男の過去を塗り替え、男に生きる希望を与える。しかしおじさんの使命は、自殺する筈だった男の魂を運ぶことだった。


可愛らしいお話で悪くなかったと思います。けっこう好きでした。
今回この公演を観に行こうと思ったのは、出演者の1人、ピチチ5メンバーである碓井さんが、ピチチ以外のところでどんな演技を見せてくれるのかと思ったから。この人は「幼い狂気」(by野間口さん)という形容がぴったりだと思う。怖かった!
おじさんの妖精界における先輩、実は男にとりついていた「呪い」。バッタの扮装しているんだけど、笑っちゃうようなそんな格好も笑うに笑えない。幼い高い声で幼いしゃべり方で、にこにこしながらおじさんに男の魂を奪うか自分が消えるかの二者択一を迫るところ、一瞬だけ落ちる声のトーンに思わずゾクっとした。手にした鎌(本物)を壁に突き立てたり、窓枠にもたれてじーっとおじさんと男の会話を聴いていたり、緩急つけた演技が最高。好きだなあ、この人。もっといろいろ観てみたい役者。
主演の2人、山本さんも渡さんも堅実な演技で良かった。正直、物語はありきたりだし脚本も演出もべたべたな印象を受けたんだけど、役者が良かったから充分楽しめたという感じ。約一時間という上演時間も丁度良く。冴えない人生の中でおみくじで大吉を引いたことすらない、という男に、最後、おじさんが「大吉」と書かれたおみくじをプレゼントするというのはほのぼのと可愛らしい。