ピチチ5『反撃バップ!!(改造)』2公演目

『反撃バップ!!(改造)』2回目を3/3に観てまいりました。
なんかもう、コンクールとかどうでもいいなあと思いました。私はほんとにピチチ5と福原充則作品が好きだ。もちろんグランプリ獲ったらすごいなと思うし獲って欲しくもあるけど、今回もものすごく楽しかったから、私が楽しんだから、それだけで充分。この作品が観られたことに感謝。
というわけでコンクールのことなど忘れて、以下感想っぽいもの。
■第一話:「隣のお前」
うるさいんだよ! というちょっとしたことからアパートの隣同士の住人がなんとなく心を通わせる。でも結局、上村(三土)は「隣のお前」(オマンキー)を捨てて、好きな子がいるバイト先へと夜勤に向かう。そのバイト先の漫画喫茶で、上村は思い人の西野(鯉沼)から言われる、「上村さん、私のこと好きでしょう。でも私、上村さんとは付き合いませんから!」。告白してもないのに振られる上村。「俺の恋愛、そこまで堕ちたのか、胸に秘めていることも許されないのか!」。

  • 三土さんとオマンキーさんのテンションがしょっぱなからMAX! 三土さんが「俺を通報してくれーーー!!」と叫んで夜中の街中を疾走するあたりや寅さんのテーマが流れるあたりの馬鹿馬鹿しさがもう最高。それにしてもオマンキーさんは声の通り具合が素晴らしい。
  • 壁を突き破って隣の部屋に乱入する装置。仕込みの時間が制限されてる中であの仕掛けを思いつき実現するなんて。これには死ぬほど笑いました。そして黒子に担がれ空を飛ぶ上村、上空に浮かぶ巨大な月と「隣のお前」。こういう、馬鹿で下らないことを100パーセント全力投球で具現化しちゃうピチチ。
  • 「想像力よ嵐を起こせ!」と叫んで好きな子のおっぱいを想像しようとしても、結局想像しきれず、目の前に現れたのは男のおっぱい。想像することすらできない非恋愛体質の上村の叫びが悲しい。そしてその時、服が破れて(このへんの工夫も面白い)露になった胸を恥ずかしそうに隠す吉見さんと植田さんが可笑しすぎる。

■第二話:「火の鳥/フリーター編」
我孫子(野間口)はソツのない性格でバイトでどんどん出世してしまう。なりたいのは漫画家なのに、漫画ばっかり描いていたいのに。バイトから遠ざかろうとすればするほど地位が上がり時給が上がる、そして漫画の方は「ふつう」であるが故に、それ以上進むことも諦めることもできない。そこに現れる漫画の神様・手塚治虫(三土)。「漫画を読むのは?」「大好きです」「漫画を描くのは?」「もうイヤです!!」。手塚先生に保証され、これ以上ないくらいに最高の諦め方ができた我孫子のフリーター人生が新たに始まる。

  • この作品が観られてほんとに泣くほど嬉しい。過去のピチチ作品で最も観てみたかったもの。
  • 「僕はダメ人間だ、明日辞表を提出してやるぞ、どうだ受理してみろ!!」「ダメ人間は、バックレるものだよ?」。このときの碓井さんのキチガイじみたハイテンションと「手取りで計算したら、バイトの君より給料が安いことが判明したんだ」と言いながらぐしぐし泣くとこが大好き。いつも思うけど碓井さんて怖い役者ですね…
  • 編集役の三浦さん。私はこの人のつめたーい表情の演技とか心のまるで篭ってないセリフの発し方とかが大好きなんだけど今回もそれがびしばしに冴えてました。
  • 野間口さん最高…!! ガッカリして「あぁ…」と言うときの眉の下がり具合とかテンションの上げ下げの落差とか、一言一言のトーンとか。ほんとにこの人は観るたんびに「いい役者だなコンチクショウ!」と思います。

■第三話:「大丈夫な人」
漫画喫茶で受験勉強を頑張ったおかげで無事大学に合格できた2人の高校生(碓井・小山)が、漫画喫茶の「店長さん」時任(植田)にお礼を言いに来る。どう見てもおじさんなのに店長ではなく単なるバイトだと知った2人は俯くが、聞こえなかった振りをして「店長さん、10年後に同窓会をやりましょう!」と提案。10年後、一流の社会人となった2人は多忙で店に行けず、代わりに部下(吉見・三浦)を差し向ける。「何か思い出話を」という2人に向かい、時任が語れることは何もなかった。「大丈夫だ、大丈夫だ。馬鹿になれ」。呪文のように唱えながら毎日を過ごすアルバイター

  • いつ果てるともわからない週6のバイト生活、変化のない毎日、遠くに行ってしまった若者たち。その彼らを「何年後でも、笑顔でここに立ってますから」と笑顔で待つと言う時任。植田さんの抑えた、不安げでちょっと寂しげな笑顔が印象的。

■第四話:「やらないバンド」
つまらない毎日と決別すべく、上村(三土)は「隣のお前」に提案する、バンドやらないか、と。「なあ、おい、俺たち、やらないバンドをやるんだよ!」。想像だけなら何でもできる、それは深夜にいろんな通りすがりの人々を巻き込み膨らんでいく。そこに神様(植田)が現れ「おまえたち4人の願いを一つだけ叶えよう」と言う。そしてそこに現れたのは巨大なエンジンつきの男性器。がっかりして三々五々現実に返っていく人たち、取り残された上村と「隣のお前」は、似たもの同志でつるんでいることに憎悪を覚えてそれぞれ別れていく。「いつかきっとお前を殺しに行ってやるから、どうか、それまでは生き延びてろよ」。

  • ものすごいテンションの高さでテンポよくすぱぱぱんと話が転がっていくのが面白い。箒をギターに見立てて弾きまくる三土さんとオマンキーさんの動きが面白すぎるし山下さんの身体能力の高さが半端ない。
  • 神様がペレ。げらげら!
  • 「何か願いを叶えよう」という展開でくだらないものを想像しちゃう、というなら平凡だしそこでチンコを想像しちゃうというオチもあるかもしれないけど、それをエンジンつきでかっ飛ぶチンコとして具現化しちゃう、福原さんのその想像力が一番凄いんじゃないだろうか。
  • 似たもの同志、一緒にいるのは心地よくもあり、自分の姿を見ているようでみじめに情けなくもあり。結局、それだけ憎しみも増す。殺したいくらい憎いのに、でも自分に似たお前が結局自分にとって「唯一」だから、「俺が殺すまで生きていろ」と言う。ハイテンションの裏にある、そんな寂しさ。