桃唄309『トレインホッパーズ』

劇団桃唄309 新作公演『トレインホッパーズ』
2007.3.14(水)〜18(日)
中野 ザ・ポケット
戯曲・演出:長谷基弘
出演:吉原清司/森宮なつめ/嶋村太一/バビィ/吉田晩秋/山口柚香/佐藤達/貝塚建/國津篤志/北村耕治/伊坂亮/服部健太郎/奥野磨記
http://www.momouta.org/products/200703THops/

17日の昼公演を観て来ました。










私が今まで主に観てきた小劇場系の芝居は、セリフや立ち居振る舞いがより日常に近い形で行われるものが多かったんですが、この桃唄309という初めて観る劇団は、どちらかというと「日常」よりも「芝居」に近い印象。もちろんそれは良し悪しではなく。こういうちょっとだけオーバーランするような芝居も、見ごたえあって私は好きです。
走行中の貨物列車などに飛び乗り無賃乗車(トレインホッピング)し、自由に旅を続ける旅行者たち(トレインホッパーズ)の物語。かつての仲間の葬式で再会した彼らの思い出話、あるいは彼らのことを取材に来た記者とのやりとりで話が進んでいくのだけれど、時間軸が過去と現在、フィクション・ノンフィクションも入り乱れて境目がわかりづらく、出されるヒントを拾い集めて話を組み立てていって最終的に「ああこういうことか」と納得しながら観ていく感じだったのでちょっと疲れる構成。この劇団はいつも稽古しながら台本を練っていく、という手法をとっているようなのでこういう構成の芝居になってるんだと思いますが、もう少しスッキリ観られればなあ。
とはいえすごく面白かった。一段高くなってるひな壇があるだけの素舞台で、舞台袖を出捌けする役者もあわせて客席に見せるような舞台の構造とか、暗転の代わりに黒い大きい旗を振ってそれに合わせて役者が動き、場面の転換をしたりだとか、凝った演出。本来こういう凝ったものって苦手なんだけど、この芝居に関してはそれがすごく効果的に使われてたように思った。こういう演出が効くのも「日常」よりも「芝居」寄りな雰囲気のせいかも知れない。
日本から逃げ出してトレインホッパーとなった者や、偶然が重なってトレインホッパーになった者。目的がよくわからないうちに旅そのものが目的となり、最終的にはそれすらもあやふやになって結局どんどん思考が先行し、何が目的なのかもわからないまま革命家気取りで暴動など起こしてしまう。そんなあやふやに漂う若者たちの姿が痛々しくもあり微笑ましくもあり心強くもあり。脚本の力に引き込まれた芝居でもありました。