明和電機ノックミュージックWS 9/29・30 そしてシンポジウム

http://intron.kz.tsukuba.ac.jp/vrlab_web/knockmusic.html
■9/29(土)
「参加される方は、「これは、たたくと面白い音ががしそう!」というモノを、”ひとつ”探して持ってきてください。」
私が選んだのはステンレスのフライがえし。
柄と返しのジョイント部分を固定して、シーソーみたく、叩く部分を自由にすると(この説明でイメージできますかね…)どうだろう、という思いつき。「平凡なものから非凡な効果」を期待。

会場は未来館7階のロビー。窓が大きくて開放的でいいんだけど、手元を見て作業するには少々暗かった。
「(今日の参加者は)コアな方ばっかりなんで、やる必要もないんですけど」と言いつつ、軽くパチモクを披露する社長。天井が高いせいか、えらいいい音をポクポク響かせるパチモク。社長「ここいい音するね」。そしてノックミュージックの原理の説明。
まずはスイッチづくり。紙製ながらちゃんと5Vの電気を出力し、インターフェースを使えば100Vで何でも動かせる。試しにパチモクに接続すると、見事にポクっと鳴るパチモク。社長曰く、「感電しないというのは僕にとって画期的」。

これがインターフェース。ノックミュージックWSのために開発されたもの。オレンジのツクバカラー、ピアノの鍵盤の形をしている。かわいい。
これと、

このノッカー、そしてこれから作るスイッチを繋げばノックミュージックの楽器が出来る。

3mm厚のボール紙を必死こいてカッターで切り、両面テープで貼り合わせてパーツを作る。
定規を当て、ふつうにカッターを走らせようとすると、社長ストップ。線を引く方をカッターに当てるとボロボロになってしまって使い物にならなくなるので、「こっち側を使って下さい」と定規の峰を。
組み立てる段になって千枚通しをぐいぐい使っていると、「ドライバーじゃないんだから!」と、スマートにお手本を見せていただく。
道具にも、それに相応しい使い方があるっちゅうことです。(つかオノレに工作のイロハがなさすぎるだけ。)

アルミを貼り、その上に電線を。ビニールコーティングを剥いて、恥らう電線をくりくりっとほぐす。中から出てきた芯も、先端のビニールを剥く。それをアルミの上にぺたんと貼って、スイッチの身と蓋(?)をラチェット(鋲みたいなの)で留めた上、間に輪ゴムを咬ませて出来上がり。

インターフェースに繋いでスイッチオンすると、カクン!と動くノッカー。
この単純な動作がえらいこと面白い!

ノックミュージックWSは、楽器を作るということよりも、「入力」と「出力」の関係をイメージすることが目的なんだとか。こっちを押せばそっちが動く、この仕組みが電気で動くものの基本。なるほどなるほど。

しかし私のスイッチはそれからぱたっとノッカーを動かさなくなってしまい、工員さんにアドバイスを受けながら一度分解→作り直し。
そしたら今度は常に電流が流れている状態に。後でわかったことですが、どうやら貼ったアルミ箔が長すぎた模様。

次は「叩くもの」(社長は「オブジェ」と表現)とノッカーをユニットに取り付ける。
私はフライがえしの返し部分を叩きつけるイメージだったんだけど、それはノッカーの叩く力がそこまで強くないので無理とのこと。残念。

↑これらを組み合わせますよ。
そうとなれば私の機構は至極簡単なので、きゅきゅっとあっという間に取り付け完了。スイッチで叩いてみると、自由な返し部分が「シャーン」と鳴って、音の鈍ったシンバルのような響き。悪くない。

完成品。「Knock!」の文字が逆になっちゃったのが痛恨。そこまで考えてる余裕なかったや。
わが班は、私のフライがえしの他、缶と生絞りジューサー(フォルムが面白くて社長「すごい現代アートだ!」)、イノシシの置物(たぶん瓢箪の類なんだろうけど、形といい色といい、まるでお盆のなすび馬)。

さて、各班のユニットを屏風のように組み、それぞれパソコンに繋いで自動演奏。曲は「パンチくんレンダちゃんダンス」。それぞれちゃかぽこいい音を出して鳴っている。おー!
次はマニュアル。それぞれ自分のスイッチを持ち、社長の指示でいろんなリズムを刻んでいく。これはもう単純に楽しい。
最後に各班で社長交えて記念撮影。片付けをしてWS一日目を終了。

■9/30(日)
二度目の参加ができました。
会場に現れた私たちの姿を見た社長、「何、補習?」。そして参加するとわかると「今日も参加するの!?」。参加します。
WSが始まると、「ここ(この班)教えなくていいから楽だわ〜」とか言ってぜんぜん教えてくれない社長。(工程表すら「いいよね」と言って、くれませんでした)(スタッフさんがくださいました)(見かねたのか)
や、たしかにウチらは二回目だけどさ、あと2人、今日初参加の人がいるんだってばよ。

前日、スイッチ作りに少々時間をかけすぎたと思ったのか、この日はかなりとっとこと作業が進んでいく。ウチの班はそのスピードについていけてないよう社長!
昨日は言っていなかった「カドアール」にやたらこだわる社長。カドアールとは、つまり角を丸く切り落とすこと。「よりスイッチっぽくなる」とのことらしい。

このへんが「カドアール」。

そして前日と同じようにオブジェとノッカーをユニットに取り付け。この日の私のオブジェはホーローのマグカップ
「オブジェは針金で、ノッカーはこれ(すいません形状からずっと「フォー」*1と呼んでいたので正式名称忘れました。プラスチックバンド)で固定」と指示。その方が見た目が綺麗だから、とのこと。このへんも前日にはなかった指示。


今回のわが班は、私のホーローマグカップの他は、ブリキの如雨露、ご幼少のみぎりの写真(木製フレームでぽこぽこいい音が鳴る)、手帳、マラカス。
偶然にも色が綺麗に揃って、見た目楽しい感じに。

ユニットの組み立て(この日は班毎ではなく全員のものを繋げました)が終わると、パソコン画面を大写しにして打ち込みについて説明。このへんになるともう専門分野すぎて、パソにも音楽にも詳しくない私のような人間には何がなにやら。
前日と同じように「パンチくんレンダちゃんダンス」の自動演奏、続いて、スイッチ持ってユニットの後ろに立ち、社長の指揮でみんなでポクポク。自動演奏+マニュアルもやってみたけどこれはぐだぐだ。


↑2日目には、スイッチの裏にサインいただきましたー。


やー、なんか我を忘れて作業に没頭しましたね、WS。一日目なんか、手元ばっかり見ててほとんど社長の顔見てねえ(笑

この後聴いたシンポジウムのときの社長の発言からも得た印象なんだけど、このひとはものすごく「ものを作る」ことにこだわりを持った、それもかなり「職人の手技」に対する憧れを持った人なんだな、と思った。
「入力→出力の仕組」、「手を使ってものを作る面白さ」、社長が伝えたいことはいろいろあるんだろうけど、説明しながらつい受講生のパーツをぱぱっと作っちゃったり、みんなが持ち寄ったオブジェとそれの出す音を聴いて楽しそうにしていたり、「結局のところ一番楽しんでるのってたぶん社長だよね」と言った方がいたのだけれど、それはもうほんとにその通りだと思う。
シンポジウムでこのWSのことを「WSだとは思っていない」と言った社長、じゃあ何だと思ってるのか、というところまでは突っ込んで語ってくれなかったんだけど、なんとなく「ワークショップ」という言葉の持つ「社会性」にひっかかってるのかなー、とか、思ったり。まあ勝手な印象なんですけど。
社長にとってこれらの活動って、「教える→学ぶ」「伝える→受けとめる」というものではなく、もっとフラットなもので、自分のためにいろんなものを吸い上げていく作業のひとつなんだろう。それだけにこういう自由な想像力が遊ばせられるこういう場は、けっこう単純に面白くて、純粋に楽しんでいるんじゃないかなーとか、そんな印象を受けました、今回。

■WS後はデバイスアートのシンポジウム。
土佐信道明和電機)、八谷和彦(ペットワークス)、クワクボリョウタの3人が自己紹介も兼ねて、デバイスアート活動の説明をそれぞれした後、クリエイティブ・コモンズ(CC)のドミニク・チェン氏も交えてのパネルディスカッション。これをみっちり3時間。すんごい面白かった!

バイスアートという言葉を私は初めて聞きました。
で、「デバイスアートって?」ということになるんですが、サイトに載ってた「デバイスアートとは?」の説明文がえらい分かりづらい…(私の文章読解能力に問題があるわけではないと思うんだが…)

もやもやっとしたイメージしか抱けないまま会場へ。そこでアーティストたちの活動紹介で生の声で紹介され実例を見せられ、ようやくイメージが掴めた感じ。生の声って大事!
その中でも社長が「デバイスアート=道具」という表現で説明してたのが面白かった。「アート→道」「デバイス→具」で、「使わないと機能しないアート作品」のこと。それで言えば明和電機の製品はどれも「使わないと機能しない作品」ばかりなので、まさにデバイスアートといえるもの。
だからこそデバイスアートと商品化というものが緊密な関係になってくるわけですな。ほほう。
バイスアートという言葉・概念自体まだ新しいもので、今回のCRESTではそれを体系化するのが目的とのこと。後付の歴史ではなく、生まれた一つの流れに「デバイスアート」という「形」を付与して「アート史のいち潮流として遺していく」運動のように感じられてひじょうに興味深し。「なるほど潮流はこうやって歴史として遺っていったりするもんなんだな」などと感慨深く聴いておりました。(←史学科出身)
この潮流は日本から発信されているもので、ひじょうに日本的なものとして世界(「西洋」と表現されてましたが)から注目を集めている分野とのこと。モノに対するこだわり、職人的な仕事、デバイスアートとはそういった「日本的」なもの。今回はCCの著作権や特許の話なんかもからんでかなり「商品化すること」という点に特化した内容のシンポジウムでしたが、アートに「経済効果」と「遊び心」が加わったデバイスアートという概念は、確かにものすごく日本的なものかも。
今後はデバイスアートの常設展示(まさに日本科学未来館の一角にそういうコーナーができるらしい!)を行うなど、いろいろなシーンで目にし耳にすることになるかも知れませんデバイスアート。

*1:ベトナムのきし麺