Star Chart Project#1『TDL≒USJ』

Star Chart Project#1『TDLUSJ
2008.3.29(土)〜4.3(木)
下北沢駅前劇場
作:TDL・・・葛木英(メタリック農家)/USJ・・・千葉雅子(猫のホテル)
演出:福原充則(ピチチ5)
出演:
TDL岩井七世坂田彩原嶺衣奈山内映美莉笹丘明里・三浦竜一・湯澤幸一郎
USJすほうれいこ岡本光太郎・平野靖幸・三浦竜一・いけだしん(猫のホテル)・石井美奈子

http://www.itoh-c.com/star/

2日、観てきました。
隕石衝突による人類の滅亡が迫った世界で進行する、二つの違う物語がオムニバスで描かれている。仲良し女子高生たちの仲良しごっこ崩壊を描いた葛木英作『TDL(とりあえず、男子ラブ)』と、選挙事務所を舞台に様々な人物が交錯する千葉雅子作『USJ(唄わない夜の、白いジュークボックス)』。

「隕石衝突」というSFな設定は、女子高生たちの秘密を暴いていく後押しとなったり、隕石衝突により引き起こされる超常現象で、昔失踪した姉が帰ってきたのではないかと男が夢想するきっかけとなったりと、物語のキィにはなっているけれどただそれだけで、物語の内容はごく平凡な日常の中で発生した歪を描いたという感じ。それぞれの脚本家の「らしさ」を福原演出がうまいこと纏め上げていて、どちらもなかなか面白かった。特に『USJ』は、テンションの振り分けも笑いもちょっと切ない感じもバランス良くて、ぐっと世界に入っていけた。前に親族代表ライブで観たときも感じたんだけど(千葉雅子が脚本提供した「泥人間」)、千葉脚本の泥臭くて切な可笑しい雰囲気と福原演出は相性がいい気がする。

TDL』、5人の女の子たち(みんな現役女子高生なんですかね? よく知らないのだけど)は「がんばったで賞」といった感じでしたが(仕方ないっちゃ仕方ないんだけど、高い声が聞き取りづらくてストレス…)きゃっきゃと騒いでいるさまの、イラっとさせるような感じは説得力あり。観客をイラっとさせたら、脚本家演出家としては得たりというところなんだろうと思う。
湯澤幸一郎は「彼女達の分身」であるらしい「謎の男」という役柄も存在そのものも芝居も特濃だが、5人の女の子たちの中にあって芝居を締める役割をよく果たしていた感じ。それにしてもほんとにキャラ濃いなこの人(笑)

USJ』、冒頭の、労働者たちの「缶コーヒーじゃんけん」のクダリ、これだけでも金払った価値アリ! と思わせるほど素晴らしかった! スタバを指して「いつからコーヒーはあんなややこしくなったんだ」という怒りともボヤきともつかないセリフとか、ドトールのベーグルを指して「サーモンて鮭だろ!」「鮭は焼けや!」「米に詰めろや!」ていうあたりとか、やーもう、ほんと可笑しかった。セリフにいちいちへんな説得力と哀愁がある。いけだしんの労働者キャラは当然のように文句なしだけど、三浦竜一の東北訛り?のキャラがまたほんとに面白くて、ああこういうキャラも演じられる人なんだ、と、今まで私が知らなかった新たな一面を見た気がした。平野靖幸演じる若者の、微妙に2人に馴染めない感じとかも良かったな。女優陣も良かったし(柚木さんサイコウ!)、やっぱり上手い役者がやる芝居は、へんなストレスがなくていいです。

あと、二つの物語の間の場転が見事。TDLの後セットそのままにすぐUSJが始まったのでどうやって場転するのかと思ったら、改装業者(冒頭の労働者3人)がてきぱきと「改装」していきました。教室の机だったものをカウンターに改造するあたりとか福原さんらしい工夫。やっぱりこの人のセンス好きだなあ。