庭劇団ペニノ『苛々する大人の絵本』

庭劇団ペニノ15th『苛々する大人の絵本』
2008.4.11(金)〜26(土)
はこぶね(劇団アトリエ)
作・演出:タニノクロウ
出演:山田伊久磨・島田桃依・瀬口タエコ 
http://www.niwagekidan.org/

19日の17:30公演を。










ああああもううう、面白かった!!! 好みどストライクな舞台だった。こういう、意味を探ることを必要としない、ファンタジックな不条理劇、大好きだ。
ストーリーといえるほどのストーリーはなし。豚(島田桃依)と羊(瀬口タエコ)が同居する一室が舞台。部屋には二本の木があり、一本は上から降ってきて天井からぶら下がっている木、もう一本は床から生えている木。豚と羊はその木から取れる白い液体を調味料として食事をつくり、生活している。そこに突然現れる「受験生」(山田伊久磨)。ここはいったい何処なのか、彼らは何者なのか判然としないまま、三人は不条理な会話を重ねていく。
『苛々する大人の絵本』というタイトルは非常に具体的なイメージの湧きにくいタイトルだけど、内容は確かにファンタジーで舞台美術もとても箱庭っぽく(特に床下にしつらえられたガリバーの世界のようなジオラマ!)、性的なイメージを喚起するシーンもいろいろあったりして、たしかに「大人の絵本」の世界。

  • 初・はこぶね。ほんとに古い古いマンションの一室。マンションの佇まいからして昭和の瀟洒な雰囲気がある。もちろん玄関で靴を脱ぐ。しかしながら客席はちゃんと段差もあるし、舞台も思ったほど狭くない、非常に観やすい良いハコでした。これが最後のはこぶね公演になる可能性が高いそうです。最後に行けて良かった。
  • 客入れの音楽がえんえん演歌。でも劇中曲はジャズピアノ(おそらく佐山こうた)。タニノクロウの音楽センス好きだ。
  • なんか高い位置にある舞台だな…と思っていたら、暗転→明転で現れる床下。そこに精巧なジオラマと、ガリバーよろしく地面に縛り付けられている「受験生」。これが現れた瞬間のぞくっとした興奮は言葉じゃ言い表せない。ペニノの舞台はほんとに鳥肌立つよ。
  • そんで、その受験生が床を突き破って上の部屋に侵入するシーン。爆笑。なにこの正体不明の面白さ!!
  • 山田さんがびっくりするくらいの美声。今まで2回ほどこの人の出演作観てますがこんな美声の持ち主だったとは。まるで小説を朗読するかのような独白シーン、朗々とした声に聞き惚れる。あと、色香。特に美男子ってわけでもないんだけどちょっときゅんとさせる雰囲気がある、この人。あ、それはガクラン+メガネっていう最強の組み合わせのせい??
  • 女優2人も良かった。あまりにも世界観にハマりすぎてて怖いほどだ。だから余計に「受験生」との対比が際立つんだな。
  • パンフレットの挨拶文に「脚本のない公演」ってあったけど、細かいシチュエーションは役者に任されていたのかなあ。しかし観たかぎりでは相当細かく作りこんであった印象。
  • 舞台美術の美しさは、ペニノは毎回息を呑むほどだ。ただリアルなのではない、リアルすぎてかえって現実感が薄くて不条理感を増すもの。今回も、小道具から床や壁や窓枠に至るまでほんとうに美しくて、特に赤ワインが注がれたワイングラスの影が白い壁に二つ並んでるとかさ、ほんとにもう。そうかと思うと、テーブルの足がほんもののイノシシの剥製でできてたりするの。この危うさのバランスが凄い。ガリバーのジオラマの凄さは言わずもがな。
  • それにしても今回大量の剥製使ってたなあ…前述のイノシシのテーブルのほかに、ブタ?の剥製とアルマジロ?の剥製を組み合わせたオブジェやシカの頭や。剥製って、人の不安を掻き立てるかも知れない。
  • 開演前から、というか「はこぶね」に入った瞬間から、異臭がするのがずっと気になっていて、何の臭いなんだろう…と訝しんでいたらやがて舞台に現れる大量のスルメ。これかっ!!

次回公演が待ち遠しい劇団のひとつです、ペニノ。