NYLON100℃『シャープさんフラットさん』

NYLON100℃ 32nd SESSION 15years Anniversary『シャープさんフラットさん』−ダブルキャスト2本立て−
2008.9.16(火)〜10.19(日)
下北沢本多劇場
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:
【ホワイトチーム】
三宅弘城 松永玲子 村岡希美 廣川三憲 新谷真弓 安澤千草 藤田秀世 吉増裕士 皆戸麻衣 杉山薫 眼鏡太郎 大倉孝二 / 佐藤江梨子 清水宏 六角慎司 河原雅彦
【ブラックチーム】
大倉孝二 犬山イヌコ みのすけ 峯村リエ 長田奈麻 植木夏十 喜安浩平 大山鎬則 廻飛雄 柚木幹斗 三宅弘城 / 小池栄子 坂井真紀 住田隆 マギー
http://www.sillywalk.com/nylon/

14日にホワイト、17日にブラック観てきました。










ここ数年ナイロンは欠かさず観ていて「ハズレタ」と思ったことはないんだけど、その中でも相当好きな公演になりました。ホワイト・ブラック、両方それぞれ好きだった。

今回はダブルキャスト2本立てで、ケラの挨拶文にも「同一演目、同一セット。ただし、ストーリーは同じでも、それなりに違った印象を残すだろうことが予想されるのは、台本や演出を、2チームで使い分けてみようと考えているからだ。もちろん結末も。」とあったことから相当2本の間には差が出るのだろうと思ってましたが、実際両方観終えて、言うほどの差は感じられなかったな…というのが正直なところ。ケラ地図『暗い冒険』が南北のチームで分かれて同じ物語を別キャストで上演するという、今回のスタイルと同じだったわけだけど、このときは(映像でしか観てませんけど)話の筋が一緒なだけで脚本も違えば出てくるキャラクターにも相当な相違があった。このイメージがあったので、今回の「言うほど差が感じられない」という点は拍子抜けといえば拍子抜け。また映像ででも白黒両チームを見直して比較すれば発見もあるかも知れないけど、両チーム一回ずつ観た感想はそんな感じ。

その分、役者の比較がシビアになったかも。両チームとも技量は申し分ない役者ばかりだしそれぞれの個性もあるわけだから基本的にみんな良かったとは思うんだけど、こっちのチームのこの人でこっちのチーム観たかったなー、とかそういう比較はどうしても出てくる。私はホワイト→ブラックの順で観たので、ブラックは物語がわかってる分キャスティングに馴染むのに少々時間がかかったりした。特に「音波」のキャラクターは、清水宏のホワイトを観た後ではみのすけがどうにも上品過ぎる印象があって、この後園田の最後の舞台をアドリブで台無しにしてしまうことがわかっているだけに、それほどおどけたことのできる人物には見えずなかなか馴染めなかった。しかし最後には娘と分かり合う父、というホワイトとは異なったラストを思えば、やはりブラックにおける「音波」はみのすけしかいなかったろうなあ、と、最後の最後でようやく落ち着いた感じ。

今回は客演陣も豪華でそれぞれ良かったんだけど、それよりもやっぱりナイロンの役者が魅力的。「赤坂」の松永玲子の傍若無人な感じと峯村リエの天然な感じとかほんとに両方面白かった。「煙」の開き直ったダメ人間感漂う三宅弘城と繊細な大倉孝二もどちらも好きだった。「世界中の人間があなただったらよかったのに」と嗚咽する大倉さんは特に素晴らしくて泣きそうになった。あ、あと新谷真弓植木夏十がめちゃくちゃ良かった。二人とも好きな女優さん。かわいいったらない。

というわけでほんとに楽しかったし胸にぎゅんぎゅん迫って来た良い舞台だったんだけど、明らかにケラが自分自身をベースにして紡いだ物語(「半自伝的」と公言してるわけだし)なわけで、それはぜんぜん構わないんだけどもやっぱりそうなるとちょっと美しすぎないか…? という思いもなくはなくてほんのちょっとだけムズ痒い思いもしながら観た約2時間半。