『ザ・ダイバー 日本バージョン』

ザ・ダイバー 日本バージョン
2009年8月20日(木)〜9月20日(日)
東京芸術劇場 小ホール1
作・演出:野田秀樹
出演:大竹しのぶ 渡辺いっけい 北村有起哉 野田秀樹
http://www.nodamap.com/productions/thediver/

観劇歴そこそこ長いにもかかわらず、野田作品初見でした。あっと言う間に引き込まれて、最後までドキドキしっぱなし。
以下簡単に。










「現代能楽集」のシリーズの一つとして初演されたときに見逃して、再演のときも結局行けなくてチケットを手放し、うんうん唸っていたところで今回の日本ヴァージョン上演。そりゃ何はともあれ観に行くよね。
能の演目である「海士(あま)」や源氏物語のエピソードの数々、囃子など能楽らしいアイテムをふんだんに盛り込みつつ、放火殺人を犯した女の心の闇に迫る。現代劇に古典の物語や手法を持ち込むと、ともすると鼻につくものになってしまいかねないけど、野田秀樹の演出とキャストの好演が実に美しくそれらを纏め上げていて見ごたえ充分。大竹しのぶはスイッチを切り替えるように様々な人間の様々な感情を表現してほんとに大女優の貫禄。あと北村有起哉がまあ色っぽいこと。緊張と緩和、迫真のシリアスと皮肉っぽい笑いの組み合わせが絶妙で最後まで飽きませんでした。
「この世ならざるもの」を演じるときに能面の代わりに袋状の布で覆って顔を見えなくしていて、能の手法を踏襲している演出も面白かった。そこに般若の顔を描いていたのはちょっとあざとく感じてしまいましたが。あれは、布の色を変えるなどもっとシンプルに表現できなかったのかな。まあ好みの問題かもしれませんけど。
なにはともあれ、濃くて贅沢な公演でした。考えてみたらあの規模の小劇場であのキャストを観られることってそうそうないだろうし、そういう意味でも贅沢だったなあ。