アンチクロックワイズ・ワンダーランド

阿佐ヶ谷スパイダースPRESENTS『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』
2010年1月21日(木)〜2月14日(日)
本多劇場
作・演出:長塚圭史
出演:池田鉄洋内田亜希子加納幸和/小島 聖/伊達 暁/中山祐一朗馬渕英俚可/光石 研/村岡希美山内圭哉
http://asagayaspiders.net/modules/tinyd0/index.php?id=5

建国記念日11日のマチネ。










すごい好きなテイストの芝居だった。でもすごく退屈な芝居でもあった。
今までのケイシーらしさの薄い作品なんで、イギリス留学の影響にその原因を求める声もいくつか聞いたんだけど、どうなのかな。私はあまりその影響の色濃さは感じなかった。いや、影響はあるんだろうけど、それが前面に出てる感じは受けなかった。ケイシーがイギリス行っちゃう前の前回公演『失われた時間を求めて』、これ私は残念ながら観てないんだけど、今回の作品と共通する雰囲気の作品ということを聞いたので、ケイシーとしては自然な流れの中での作風の転換(自然な流れの中でっていってももちろん意図的なものなんだろうけど)だったんじゃないかなという気がする。意欲作、と受け止めたい。ただ、それがやや空回りしてるように感じられたのも確か。だからこちらの気持ちが乗り切らずに退屈に感じてしまったのかも知れない。時間軸も空間も滅茶苦茶にシャッフルされて、舞台上で展開されていることが現実なのか主人公の妄想なのか書かれた小説の中の出来事なのか最後までわからない。そういうの私はすごく好きだし面白いと思ったんだけど、禅問答みたいな観念的な会話が続くのに途中から飽きてしまった。そんな会話も、もっと緊張感をもって展開されれば退屈しなかったかなあと思ったり。
主人公は小説家の葛河。「葛河ホラー」と呼ばれた独特なグロテスク描写で人気のあった作家だったが、ここ2作ほどエンターテイメント性を捨てた観念的な作品に取り組み、酷評を受け、精神的にピリピリしている。…というのが物語の柱になってますが、葛河=長塚圭史、という図式でどうしても観てしまった。だとしたら、この作品そのものが長塚圭史の世評に対する挑戦状と見ることもできる…っていうのは言いすぎだろか。
あと、今回、中山さんが完全にミスキャストじゃなかったかと思ったんだけど…ニャカヤマはすごく好きな役者だけど、翻訳劇のような台詞がどうにもこうにもしっくりきていなかった。何で彼の役だけ翻訳劇調だったんだろう。(他の登場人物たちはそうでもなかったのに)
で。
結論としては、「阿佐スパでは、グロテスクでホラー以上にホラーな、エンターテイメントな作品をやってほしいよ、今までみたいに!」ってことです。すいません。でもたのむよケイシー。