グラナダTVドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」

昔、一通り観てるんですが、10年ちかくぶりにまた観てます。幸いなことにほどよく忘れていて新鮮な気持ちで観られるよ… 宅配TSUTAYA利用してるんだけども、完全版(字幕)を最低2回と日本語版(NHKで放送されてた吹替)を最低1回、つまり1レンタルにつき少なくとも3回は観てるって、これもう買っちゃった方が早いと思うんだよね…そこんとこどうなんですか私よ。
4巻まで観た感想。長い上に「楽しい」「かわいい」「かっこいい」くらいしか単語を使ってない、アタマの悪い文章なので畳みます。

第1話:ボヘミアの醜聞

グラナダ版、第1話目がこの話だったのか! ホームズシリーズの中で最も有名な失敗談をしょっぱなに持ってくるって大胆じゃね??

■しかもオープニング早々にコカインの話…重いヨ!

■日本語版てすごい編集されてたんだね。知らなかった。完全版の方で私が面白いと感じた、些細で可愛らしいシーンがことごとくカットされてて勿体無い。コカインのくだりもまるまるカットされてた。えー。

■しかし日本語版、これはこれで楽しい。露口ホームズいいな。

■それにしてもジェレミー・ブレットはやっぱ完璧。外見も、ホームズの気難しいところもプライドが高いところも意外とお茶目なところもやや気取った雰囲気も、すべてがパーフェクトだよ。舞台出身の彼が、やや芝居がかった大袈裟な仕草をするホームズにぴったりハマった、とどっかで聞いたことあるけど、ほんとその通り。ほれぼれする。

■デヴィッド・バーカーの初代ワトソンも、やや軽すぎる感じもしますがすごく好き。しかし吹替って長門裕之がやってたんだね…知らなかった。ちょっと道化すぎててこの吹替はあまり好きじゃない。

■身分が高いと推察される依頼人を部屋に迎えるにあたって、散らかり放題の部屋を申し訳程度にばたばたと片づけて、最後に紙束を部屋の隅の床にたたき捨てるシーンが好きすぎる。

依頼人ボヘミア王とわかった瞬間に緊張した面持ちでさっと椅子から立ち上がるワトソンと、依頼人の話を聞いて無遠慮に笑い出すホームズ。
ホームズの美点は誰に対しても公平であること。つまり誰に対しても不遜。

■老牧師に化けたホームズが「復讐」についてアイリーンに語るシーンは、原作にはないドラマオリジナルですが、いいシーンだな。このシーンがあるおかげでアイリーン・アドラーの物語に奥行きが出た。



第2話:踊る人形

■ベイカー街の部屋での2人のやりとりのシーンはどの回も秀逸で楽しいんだけども、この回の「株に投資しない」というのを見抜くクダリとかちょう楽しくてこのシーンだけ何度も見たくなっちゃう。「びっくりしたって証書を書け!」(吹替版)なんて冗談を言うホームズが楽しいし、それにも関わらず「なんだそんなことか」って言っちゃうワトソンが言ったあとであちゃーとなる(字幕版)のもかわいいよう。ふたりともおっさんなのにこのやりとりの可愛さは何なんだ。

■その後のホームズの、事件を前にしたハイテンションも楽しくて思わずニヤニヤしちゃうし、ずっと後のシーン、「これがEなら…」って、暗号人形のポーズを真似てぴょこんと跳ねるホームズもかわいい。露口吹替の「わかる〜?」のセリフも秀逸。

■使用人たちを事情聴取しているときにワトスンがホームズに耳打ちして、動揺しているキング夫人に椅子を勧めさせるシーンが、何気ないけどすごく良くて大好き。仕事に取り組み始めると他人のことに気を回せないホームズと、そういうところもきちんと目配りできるワトソンと。いいコンビっぷりがささやかに示されている名シーンだと思う。


第3話:海軍条約事件

■これもやっぱりベイカー街の冒頭シーンが好きすぎる!
ハドソン夫人をせっかちに呼んだり、洗面器に手をつっこんで飛び上がって「ハドソンさん、お湯!」って叫んだり、せかせかと落ち着きのない日常のホームズの性格をよく描写してる。
あと、このシーンのホームズが髪型をきちんとしすぎてないのが好き。

■紙巻煙草に火をつけるシーンのジェレミーホームズがあまりにもかっこよすぎる。

■原作において最大の謎のシーン(ホームズシリーズ中、事件のトリックなんかよりもこのシーンの方がよっぽど謎)、ホームズが薔薇を手にして唐突に宗教論と推理論をぶつクダリ、これがかなり原作どおりに再現されてて笑った。日本語版だと相当「超訳」されてて違和感なく話を収拾してましたが。完全版の方ではハリソン嬢に詰め寄られてから初めてハっと我に返る。このへんの表情とかもジェレミーホームズは完璧だなー。

■外務省の部屋を調査中にフォーブズ刑事に遭遇するシーン。ジェレミーホームズはよく一瞬だけぱっと笑顔をひらめかせる笑い方をしますが、ここも床に座り込んだまま相手を見上げて一瞬だけニコっとする。そしてそれに続く、相手の侮辱に対して決然として異議申し立てをして相手をペシャンコにする容赦なさ。もうこのクダリも楽しくて仕方ない。

■ラストもにぎやかでいいよねこの話は。でも病み上がりの人間にドッキリ仕掛けるなんて、やっぱりホームズの感覚は常識人ばなれしてるとおもうの。



第4話:美しき自転車乗り

■冒頭の、仕事を邪魔されてムっとするホームズと、それに怯まないハドソン夫人。この冒頭がラストでコントのようにオチるのが楽しい。「説明しよう!」って、ワトソンを無理矢理部屋の奥に引っ張っていくホームズ。マッドサイエンティスト

■「私は役立たずだったか?」というワトソンに、一瞬考えたホームズ「Yes!」。ひどい…(涙)

■まるで助手のように扱ってますが、そもそもワトソンは開業医というカタギの職業のある平和で善良な、いちロンドン市民に過ぎないんですよホームズ?(少なくともドラマ版じゃそういう設定になってる筈)

■この話の最大の見せ場はなんつっても悪党ウッドリーをボクシングで叩きのめす紳士シャーロック・ホームズ氏です。怪我こさえて帰宅した彼をやや呆れたように手当てするワトソン。最後には笑っちゃうところがほんとお人好しっぽくていいなー。

■「馬車を止めろ!」って、こういうときに動くのはやっぱりワトソンくんなのね…

■原作のホームズはコカインに対して完全に開き直ってますが、ドラマ版ではワトソンにコソコソ隠れてやってたりして、そこが面白くてニヤニヤしちゃう反面、ちょっと切なくもある。ここのラストでは注射器に気づいてぐっと一言言いたそうなワトソンと、その先手を打つように話題を変えるホームズのやり取りにちょっと胸キュンする。(胸キュン?)



第5話:まがった男

■これは…半分くらいヘンリー・ウッドの思い出話なんで、正直そんなに面白味のある話ではないんだけど。

■冒頭、始まるなり機嫌の悪いホームズ。でも話に興が乗り出すと次第にアクティブになりだす。

■ワトソン「暑いところじゃ、将校や奥さん連中の軽い浮気は珍しくない」
ホームズ「軍隊の風紀解説ありがとう」
爆笑!

■従卒くんが田中要次に激似な件

■この話のラストもオリジナル。ワトソンがホームズをへこませるのは楽しい。しかし領収書を挟みっぱなしにするとは初歩的なミスだねホームズくん。



第6話:まだらの紐

■この話は原作も大好き。ドラマ版もちょう面白い!

■ホームズは女性に対してしっかりと紳士的だ。優しくもある。

■頬杖をついて、難しい顔で考え込むジェレミーホームズがかっこいいです。

■ドクター・ロイロットとの直接対決はやっぱり楽しすぎる。興味深そうに、また挑むように相手を見る不遜な表情とか、相手がへし曲げた火かき棒をまっすぐ伸ばしてみせた後に例の笑顔を一瞬だけ見せるとことか…かっこいいなあ、うん。

■そんで汚れちゃった手をすかさず洗いに行くとことか、原作にない細かいシーンだけど、「猫みたいに綺麗好き」なホームズをよく表わしてる。

■それにしても、これ、撮影大変だったろうな… ジュリア役の女優さん、あの撮影でリアルに白髪になったりしなかったんだろか。



第7話:青い紅玉

■寝起きホームズ!パジャマで髪ぼっさぼさ!(萌)
原作にはないシーンだがどこに向けてのサービスシーンだろう(←大誤解)

■「まだらの紐」ではワトソンが寝起きドッキリでしたけど。(←これも誤解)

■着替えはしなくても髪型だけはちゃんとするんだねホームズ。

■クリスマスってのが西洋文化圏の人々には特別な意味を持つ日なんだというのを認識させてくれる一編。「愛と寛容の季節」byホームズ

■ホームズがあえて犯人を見逃したり、自分で手を下す(警察や被害者などに差し出す)ことを避けて大岡裁きをする物語はいくつかあるけど、その中でもこの話におけるホームズの「出て行け」は深くて良いなあ。

■このクダリのジェレミーホームズが、その日の朝には髪ぼっさぼさの酷い状態で半分寝ながらピーターソンの話を聞いていた人物と同一人物とは思えぬほど思慮深げで毅然としててかっこいい。

■原作だと、あくまでもワトソンの「記録」として、一人称で話が進んでいくためどうしても描写に限界があるところ、ドラマでは、キリキリしている伯爵夫人と警部・ホーナーと妻・ライダーと小間使い・なんとか自白させようとホーナーに迫る警部…といった細かい部分にまで描写が行きわたっていて、全体の物語が納得しやすいものになっている。上手いなー。

■納得しやすいといえば、ホームズがライダーを見逃してやるクダリも、(原作にはない)ワトソンの非難の言葉と、「僕は警察に雇われて仕事しているわけじゃない!」のホームズのセリフを激しい口調で言わせることによって(原作にもこのセリフはあるんだけど、普通の口調で言っている)、犯罪を見逃したホームズの行為に説得力を持たせている。このへんも上手い。

■最後、冤罪が晴れたホーナーのために2人が深夜にもかかわらず食事をほっぽりだして出かける(ワトソンはたぶん、家族でクリスマスを過ごさせてやりたかったんだろうな)、っていうのはドラマオリジナル。素敵なラスト。

■この一編に限ったことじゃないけど、完全版をよく聞いていると、字幕に表れない部分でこの2人はほんとによくお互いの名前を呼び合ってるな…


第8話:ぶなの木屋敷の怪

■この日本語のサブタイトルはちょっとひどい。そのまま「ぶな屋敷」でいいんでは…?

■完全版、冒頭いきなり不機嫌マックスのホームズがワトソンに食ってかかって口論。日本語版ではまるまるカットされてるのはなんとも遺憾。

■あんなに酷いこと言われても、ホームズの機嫌の悪さの原因がわかると途端に怒りを収めるワトソン。大人。

■デヴィッドワトソンはたまにホームズのお株を奪うようなこと言うよね。

マスチフ犬に食い殺されそうになってるルーカッスルを前にして、必要以上に距離を詰めずに遠まきに伺うホームズ一行。悪党を救うのに身を危険に晒す気にはなれないという正直な気持ちの表れでしょうかあの距離感。
あの距離で犬を撃ち殺すとはワトソンくんは射撃の腕は相当いいみたいですネ。

■ラストのワトソンの、ちょっと得意げな表情がいいなあ。